プロボクシングのWBC・WBO世界スーパーバンタム級タイトル戦が2023年7月25日に東京・有明アリーナで予定され、王者スティーブン・フルトン(米国、29)に元世界バンタム級4団体統一王者・井上尚弥(大橋、30)が挑戦する。
バンタム級から階級を1つ上げて初めて臨むスーパーバンタム級。その初戦でいきなり2団体王者に挑む。世界の「モンスター」に階級の壁は存在するのか。スーパーバンタム級での耐久性は?J-CASTニュースは、数々の世界戦をプロモートしてきたTMKジムの金平桂一郎会長(57)に分析してもらった。
「パンチはスーパーバンタム級で間違いなく通用する」
井上がプロで初めて世界王座を獲得したのが14年4月だ。WBC世界ライトフライ級(48.9キロ)のベルトを巻き、その後、フライ級(50.8キロ)を飛び越してスーパーフライ級(52.1キロ)、バンタム級(53.5キロ)を制した。バンタム級では主要4団体(WBA・WBC・WBO・IBF)の王座を統一し、スーパーバンタム級(55.3キロ)で世界4階級制覇を目指す。
プロデビュー以来負けなしの24勝(21KO)と、ほぼ完ぺきな成績を残している。初めて世界王座を獲得したのが48.9キロのライトフライ級で、今回のスーパーバンタム級は約6キロ上の55.3キロがリミットとなる。
対戦相手のフルトンは主にスーパーバンタム級のリングに上がってきた選手で、減量苦から近い将来、1階級上のフェザー級(57.1キロ)への転向が見込まれる。身長(169センチ)、リーチ(179センチ)ともに井上(身長165センチ、リーチ171センチ)を上回り、体格的に優位とされる。
金平会長は井上のパンチについて「スーパーバンタム級で通用するかといえば、まず間違いなく通用する」と断言し、「スーパーバンタム級で強打者とはみなされていないフルトン選手のパンチをもらうとどうなるか」と投げかけ耐久力に言及した。
「井上選手が対戦した中で代表的な強打者はドネア選手。2試合戦って最初の試合は眼窩底骨折などで苦戦したが2試合目は快勝でした。ドネア選手はスーパーバンタム級、フェザー級を制していることから論理的にはスーパーバンタム級のパンチに耐えられると思われるが、そんなに簡単ではないのがボクシングです」
「ほとんどの試合が耐久力を示す前に終わってしまった」
そして「フルトン選手のKO率が高くないからといって攻撃力が低いと断定するのは間違い」とし、「何気ない交換のパンチが効いてしまうことがある。フルトン選手は目が良いのでタイミングの良いカウンターを打てる。見た目がものすごいというパンチでなくても効いてしまうケースがある。幾多の王者が下の階級から上げていく時に苦しみました。複数階級を制覇する難しさです」と解説した。
プロモーターとして数多くの世界戦をプロモートし、海外で多くのビッグマッチを観戦してきた金平会長は、複数階級制覇に挑んだ王者が「階級の壁」に跳ね返された場面を何度も見てきたという。
金平会長は「何気ないパンチを被弾してダメージとして溜まってしまうケースもあります」とし、次のように持論を展開した。
「相手と戦った時に重さや頑丈さを感じる。そして骨格の違いによる威圧感。これがいわゆる階級の壁というものです。井上選手の場合、ほとんどの試合が耐久力を示す前に終わってしまっているので未知数です。フルトン選手のようなスーパーバンタム級の第一線で戦っている選手の攻撃を受けた時にどうなるかは分からない。ただこの試合で耐久力を示すことができれば、その上のフェザー級が見えてくるでしょう」
井上は16日にインスタグラムを更新し、鍛え上げた上半身の写真を添付し「デカさは十分 ここにスピード、キレ、タイミング思い切りを増し増しで行きましょう」とのコメントを投稿し、順調な仕上がりをアピールした。