会社法違反(特別背任)の罪などで日本で起訴され、レバノンに逃亡した日産自動車元会長のカルロス・ゴーン被告が2023年7月18日、東京・丸の内の日本外国特派員協会でオンライン会見を開いた。
日産はゴーン被告の行為で信用が傷つけられたなどとして、ゴーン氏を相手取って約100億円の損害賠償を求める民事訴訟を起こしている。一方、ゴーン氏はレバノンで、日産などを相手に10億ドル(約1381億円)を求める訴訟を起こしたことが報じられている。提訴が「復讐(ふくしゅう)」なのか、という記者の質問には、ゴーン氏は「報復ではなく、自分の権利の一部を取り戻そうとしている」と主張。「私はただ、犯罪者や陰謀を企てた者たちがベッドの中で静かに眠れないようにしたいだけだ」などと述べた。
「私が得ることができるのは、損害に対する小さな補償だけ」
ゴーン氏のレバノンでの提訴は23年6月にロイター通信などが報じた。提訴は5月で、名誉毀損、誹謗、中傷、証拠捏造などを主張して日産など3社と個人12人を訴えたという。
ゴーン氏の記者会見での説明によると、レバノンで提起されているのは民事ではなく刑事訴訟。その意図を次のように説明した。
「日産がレバノンで行った多くの罪に対する刑事訴訟だ。証人も事実もあって、彼らは逃げられない。日産は私に多くの損害を与え、それは修復不可能なものだ。私が得ることができるのは、損害に対する小さな補償だけだ。レバノンでは刑事告訴に対して出頭が求められ、出頭しないのであれば、それなりの結果が当人たちには及ぶだろう。民事訴訟ではなく刑事訴訟だが、金銭的な結果もともなうものだ」
国外逃亡しなければ「悲劇的な茶番劇の餌食になっていた」
その上でゴーン氏は、国連人権理事会の「恣意的拘禁作業部会」が20年、ゴーン氏が日本で受けた勾留について「4度にわたる逮捕と勾留は根本的に不当」だとする意見書を公表したことに言及。報告書では、日本政府はゴーン氏に賠償すべきだとしていることに触れて、
「これは私の弁護士ではなく、国連の専門家が求めていることだ」
「報復ではなく、自分の権利の一部を取り戻そうとしている」
などと主張。
「私はただ、犯罪者や陰謀を企てた者たちがベッドの中で静かに眠れないようにしたいだけだ」
とも話した。
日本から逃亡したことを後悔しているか、との質問には、仮に日本に残っていれば、日産や検察官による「悲劇的な茶番劇の餌食になっていた」として「まったくしていない」と答えた。
特派員協会の会見場では、日産がゴーン氏に対して起こしている民事訴訟でゴーン氏の代理人を務めている郷原信郎弁護士が、
「私はゴーン氏に日本にとどまって刑事裁判を受けてもらいたいと思っていたが、今改めて振り返ってみたときに、果たして今の日本の刑事司法のシステムのもとで、ゴーン氏に対して公正な刑事裁判が行われただろうか、ということを考えると、結果的にはゴーン氏がこのような選択をしたのも、やむを得なかったと思うぐらい、日本の刑事司法のシステム、特に検察が特捜部の組織で行う捜査・起訴は極めて不当なもの」
などと話し、ゴーン氏と同様の考えを示した。
日産自動車の広報担当者はゴーン氏が起こした訴訟について「ノーコメント」としている。
(J-CASTニュース編集部 工藤博司)