カナダで、親指を立てた「いいね」を意味する絵文字が契約書への同意として認められ、裁判所が賠償金の支払いを命じたと報じられた。サインなどではなく絵文字が有効と認められた珍しい事例だが、日本で同様のケースが起きたらどうなるのか。 J-CASTニュースは7月12日、ほくと総合法律事務所の藪田崇之弁護士に取材した。
農家は「いいね」を「受け取り確認しただけ」とするも判決は契約合意
各メディアが報じるところによると、2021年にカナダで、業者が農家に対し作物の納入を求める旨の契約書を「確認をお願いします」というメッセージとともに写真で送り、それに対して農家は「いいね」の絵文字で返信。業者は契約書への合意と受け取ったが、作物は届かず裁判へ発展した。
報道によると農家側は「絵文字は契約書を受け取ったことを確認しただけで、合意を示したわけではない」と主張。しかし、カナダ中部サスカチワン州の裁判所は、業者と農家の過去のやり取りから絵文字が契約書への合意を示すと認め、農家に対し賠償金の支払いを命じたという。
この判決に関し、企業法務に詳しく、「起業家が知らないとヤバい契約書の読み方」(秀和システム)などの書籍も執筆する、藪田弁護士は「本判決は一般的に絵文字による契約の合意を認めたものではなく、事業者と農家の過去の契約のやり取り等の個別具体的な事情を踏まえた結果、合意を認めた判決だと考えられるが、それでも『了解』だけでなくさまざまな意味を持つ絵文字である『いいね』が合意と認められた本事例は珍しい」とした。