「反対側の意見も一定程度あると認識した方がいいと思います」
出演者の不祥事と作品は関係ないのではないかという声が度々上がる中、なぜテレビ局は「配信停止」という対応を取るのか。上智大文学部教授の音好宏氏は7月5日、取材に対し、今回逮捕された猿之助容疑者の出演作品の配信停止には、そもそも以下のような前提があると予測する。
「『作品に罪はない』という意見がある一方、『猿之助容疑者は許せない』という意見もあると思います。両方の意見がNHKや民放に寄せられていると思います。だから、反対側の意見も一定程度あると認識した方がいいと思います」
NHKは国民の受信料で運営されているため、NHKに対する信頼を高めることが受信料の支払いに繋がる。そのため、寄せられる視聴者などの声をもとに配信停止を総合的に判断していると、音氏は見解を示す。民間放送は、視聴者から寄せられる声やスポンサーの反応、スポンサーに直接寄せられる声などをもとに総合的判断しているという。
猿之助容疑者の逮捕をめぐっては、NHKや民放は報道機関でもあるため、警察取材のなかで「逮捕される可能性もある」といった一定の方向性は見えていただろうと、音氏は推測。事件性がある問題については、NHKや民放は非常に慎重に扱っただろうと述べる。
(1)世の中の意見分布を把握したり、スポンサーに配慮したりする(2)出演者の不祥事に事件性がある――という点を踏まえて、放送事業者は自身を律する放送倫理基本綱領といった基準に照らし合わせて、慎重に判断せざるを得ないという。