韓国の野党議員の日本訪問団に対して、与党が「屈辱」「国際的な恥」「無謀な遠征デモ隊」などと激しい批判を浴びせている。
一行は7月10日から12日にかけて日本を訪れ、東京電力福島第1原発から出た処理水の海洋放出に反対する運動を展開した。特に非難されているのが、野党議員としか面会できなかったり、東京でハングルの横断幕を掲げてデモを展開したりした点だ。こういった点を与党は「外交まで政争に利用しようとする見え透いた思惑」だとこき下ろしている。
「誰もいない日本首相官邸でハングルの横断幕を掲げて...」
訪日団は最大野党「共に民主党」や無所属議員10人で構成。7月10日に国会や首相官邸前で抗議活動を行い、7月11日午前に超党派の議員連盟「原発ゼロ・再エネ100の会」メンバー、午後に社民党の福島瑞穂党首らと面会して意見交換している。
これに対して与党「国民の力」ユン・ヒソク報道官が7月12日付けで談話を出して批判を展開した。抗議活動については「首脳外交で岸田首相が出国し、誰もいない日本首相官邸でハングルの横断幕を掲げてデモを行った」と表現。特に「ハングルの横断幕」を問題視した。
「日本語を知らない韓国メディアのための配慮と優しさだと理解する国民がいるだろうか。外交まで政争に利用しようとするその見え透いた思惑がそのまま露呈したのだ」
福島氏との面会も批判の対象になった。
「日本の与党議員とは一度も会談せず、野党議員だけに会い、衆議院1議席と参議院2議席に過ぎない社民党党首に会う『面会ショー』まで行った。これだけでも屈辱だ」
こういった経緯を念頭に、
「IAEA(国際原子力機関)事務総長に向かって専門家でもない国会議員が怪談的な主張を吐き出し、日本に行っては汚染水を口実に反日感情をあらわにしてデモを繰り返している野党議員たちの姿が国際社会に知られた。国際的な恥としか言いようがない」
などと訪日をこき下ろした。
特派員協会では「専門家の立場と相反する主張」展開
7月12日には東京・丸の内の日本外国特派員協会で記者会見し、メディアに対して放出の中止を訴えた。韓国メディアからは、その内容も批判されている。処理水に含まれるトリチウムに関する質問に対して、尹才鉀(ユン・ジェガプ)議員は
「トリチウムが体内に蓄積され、DNAやRNAの変異を引き起こす可能性がある。さらに、血液がんや奇形児の危険性がある」
と発言した。朝鮮日報は、これを
「他の原発でもすでにトリチウムが排出されており、海水に希釈されれば人体に影響を与えない、という専門家の立場と相反する主張」
だと批判している。
一方、岸田文雄首相と尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領が訪問先のリトアニアで行った日韓首脳会談については、高く評価している。日本外務省の発表によると、岸田氏は
「海洋放出の安全性に万全を期し、自国民及び韓国国民の健康や、環境に悪影響を与える放出は行われない」
旨を述べたのに対して、尹大統領は
「IAEA包括報告書の内容を尊重すること」
と求め、韓国政府の立場を説明している。
「国民の力」ユン報道官の7月13日付けの談話では、首脳会談が
「福島の処理水放流に関する議論を通じて、ねじれた結び目を解く転換点を作った」
として、成果を次のように強調した。
「タイトな外交日程の中でも緊密なコミュニケーションを続けた今回の首脳会談は、日韓シャトル外交の完全な復元を示している。両国の努力は未来志向的な成果につながるだろう」
(J-CASTニュース編集部 工藤博司)