盗撮行為を直接取り締まることのできる「撮影罪」が盛り込まれた新しい法律が2023年7月13日に施行されるのを前に、羽田空港第2旅客ターミナルで7月12日、法律をPRするポスターを掲示する作業が行われた。
全日空(ANA)で客室乗務員(CA)部門のトップにあたる取締役執行役員客室センター長の西嶋直子氏が取材に応じ、「機内における盗撮行為からお客様、また客室乗務員を守ることが可能となり、航空業界として大変ありがたく受け止めている」などと話した。
事案発生の都道府県を特定しなくても処罰できる
これまで盗撮行為は、都道府県ごとに定められている迷惑防止条例などで処罰されていた。ただ、どの自治体で盗撮行為が行われたかを特定する必要があり、飛行中の航空機内での行為を立件するにはハードルがあった。
これに対して、6月に可決・成立した法律では、体の性的な部位や下着などを相手の同意なく撮影したり、撮影した画像を拡散したりする行為を、全国で罰することができるようになる。
ポスターは業界団体の定期航空協会が作成。「NO!盗撮」のキャッチフレーズとともに、CAのスカートにスマートフォンを差し入れようとする乗客のイラスト付きで「3年以下の拘禁刑か300万円以下の罰金」が課せられる可能性があることを呼びかけている。
ANA広報部では取材に、
「具体的な件数や内容については回答を控えさせていただきますが、過去に社員からの報告があったことは事実で、実際に盗撮行為により検挙に至ったケースもございます」
としている。ただ、今回の法律の処罰対象には含まれない、同意なくCAや他の乗客を撮影する「無断撮影」を含めると、被害に遭ったと感じているCAは多い。
7割のCAが乗務中に盗撮・無断撮影の被害に遭ったと受け止める
航空各社の労働組合などでつくる「航空連合」が22年11~12月にCAを対象に行ったアンケートによると、回答者1573人のうち、「ご自身が乗務する便で盗撮・無断撮影にあったことはありますか」という問いに38%が「ある」と回答。33%が「断定できないがあると思う」と答え、計71%が乗務中に被害に遭ったと受け止めている。
「具体的に何に対する盗撮・無断撮影行為でしたか」で最も多かったのは「全身」(66%)、で「自分以外の客室乗務員」(57%)が続いた。「スカートの中」(8%)、「胸部または臀部(でんぶ)」(3%)といった、今回の法律で処罰対象になりうる部位を撮影されたとする回答もあった。
「盗撮・無断撮影行為に対して、どのように対処しましたか」の問いでは、「画像の削除を依頼」22%、「口頭で注意を実施」18%で、最も多かったのが「特に対処することができなかった」が57%だった。
西嶋氏は、これまでは事案の発生場所の特定が難しかったことから、
「客室乗務員も、その辺を非常に悩みながら、そういう行為に当たったときには、これまで苦労してきたのではないか」
と推測。法律が施行されることで、現場のCAからは
「盗撮の抑止に繋がると嬉しい。盗撮が抑制されることで、客室内の安全性をより高めることができる」
といった声があがっているという。
西嶋氏は
「無断撮影についても、社会的な意識が高まっていけば非常に喜ばしい」
とも話した。
(J-CASTニュース編集部 工藤博司)