ツイッターで突然の閲覧制限による混乱が広がったその渦中に、フェイスブックやインスタグラムを展開する米メタ社が、ツイッターに対抗するSNSとして「Threads(スレッズ)」をリリースした。スレッズは、ツイッターの代替となりえるのか。
リリース前にJ-CASTニュースがツイッターユーザーを対象に実施したアンケートでは、「このままツイッターを続ける予定」「ツイッターを続けながら、代替となるSNSを利用する」と回答したユーザーが9割を超えた。ツイッターにはどんな特異性があるのか。何が利用者を虜にしているのか。2023年7月10日、ITジャーナリストの篠原修司さんに取材した。
ツイッターに代わるSNSとして期待されたスレッズ
スレッズは6日に公開され、大きな注目を集めた。メタ社のマーク・ザッカーバーグ氏の投稿によれば、既に7000万人が登録済みだ。ツイッターのように文章を投稿できるSNSで、文字数の上限は500文字。写真は10枚まで、動画は5分まで掲載できる。
スレッズのリリース当時、ツイッターでは一時的な投稿の閲覧制限で混乱が広がっていた。代替するSNSを探す声も広がり、開発中だったスレッズ含む複数のSNSが候補に挙げられた。
J-CASTニュースは、3日に公開した記事「ツイッターに代わるSNSは? 突然の規制で移動先を探す人々...『どこにも行くところはない』の声も【読者投票】」でアンケートを実施し、読者にツイッターの代替となりえるSNSを尋ねた。
合計6つの選択肢に284票が集まり(10日昼時点)、最も票が投じられたのが「Metaが開発中のSNS」(現スレッズ)で、約40%にあたる114票を獲得した。2位が「Mastodon(マストドン)」で23%(65票)、次に「その他」で13%(37票)だった。その後は「Bluesky」「Misskey.io」「truth social」と続いた。
スレッズはツイッターの代替となりえるのか。取材に対し篠原さんは、ツイッターをあまり利用せずインスタグラムを中心に利用していたユーザーにとっては代替となる可能性があると指摘する。一方で、多くのツイッターユーザーにとっては代替となり得ないという。
「Twitterにアクセスできない状態が長期間続いたり、極端にサービスが悪くなったりしない限りなり得ないと思います。 多くのユーザーはいまのTwitterで満足してしまっているため、わざわざ乗り換える必要性がないからです」
篠原さんは、7月1日ごろから続くツイッターの閲覧制限は徐々に解消され、運営からの告知は無かったものの、現在は平常通り利用できていると話す。それでは、従来のツイッターのどんな点が利用者を虜にしたのか。
ツイッター利用者を虜にしたのは「優れた速報性」
多くのツイッターユーザーは利用継続の意思を示している。J-CASTニュースは7月3日から1週間、ツイッターのアンケート機能を用いて、今後のSNS利用に関して尋ねた。
その結果158票中、「このままツイッターを続ける予定」と回答したのは約47%、「ツイッターを続けながら、代替となるSNSを利用する」は約44%だった。一方、「ツイッターを辞めて、代替となるSNSに移動する予定」は約6%、「ツイッターを辞めて、代替となるSNSも探さない予定」は3%にとどまった。
篠原さんは、多くのツイッターユーザーの心をつかんだのは「優れた速報性」だと指摘する。
「写真や動画とは異なり、テキストベースのTwitterはニュースやイベントなどの最新情報がすぐに投稿でき、それについての感想も多く流れてきます。 つまり、同じ話題に注目している人たちのなかで一体感が生まれます。 そうした体験を長く味わってきたユーザーほど、ほかのSNSに乗り換えることは難しいと考えられます」
実際に、人気アニメ「天空の城ラピュタ」が放送されると、主人公たちのセリフと同じタイミングで「バルス」という投稿が急増するなど、番組の流れや感想を多くの人々と楽しむユーザーは多い。また地震や豪雨などの災害があった際にも、自治体などによるタイムリーな情報を入手することができる。
加えてツイッターには、その時何が話題になっているか伝える「トレンド」という枠がある。同じハッシュタグを利用した投稿が急増するとトレンドに掲載されることから、投稿内容の露出を増やすために「ハッシュタグ運動」が行われることもある。篠原さんはこれもツイッターの特徴であると説明する。
さらに他のSNSには持ち合わせない特異性として「文字数制限」を挙げる。
「文章が140文字以内に制限されているため、なるべくわかりやすく、簡潔にする必要があります。 結果として、短時間でより多くの情報を摂取できます。 活字や情報が好きな人からすると、これはブログやニュースサイトでは体験できないものです」
実際に篠原さんは、他のSNSを利用した際に、情報量の乏しさから物足りなさを覚えることもあると話す。
新SNS・スレッズは、ツイッターの「おすすめ」欄しかない
それでは新SNS・スレッズについては、どのように評価しているのか。篠原さんはスレッズの大きな特徴は、「タイムラインが『Twitter』で言うところの『おすすめ』しかない点」だと述べる。
ツイッターではフォローしているユーザーの投稿が時系列に並ぶタイムラインとは別に、ツイッターのアルゴリズムで各ユーザーにおすすめの投稿を紹介する「おすすめ」の枠がある。現在のスレッズのタイムラインは1つで、この「おすすめ」に近いという。
「特定の相手をフォローすることでその人のスレッド(Twitterでのツイート)はよく流れてくるようになりますが、それ以外のスレッドも多く目にします。 フォロワー同士のコミュニティに閉じ込もるのではなく、より多くのコミュニケーションを取るように誘導しているように感じました」
篠原さんが実際に利用した感想としては、「インスタグラムでよく見かけるようなキラキラしたものが多いため、『Twitter』のヘビーユーザーとしては見ていて苦しいものがありました」と話す。フォロー外から流れてくる投稿内容は、「インスタ映え」と呼ばれるような情緒を掻き立てる風景やおいしそうな料理、充実した私生活を紹介するような内容であり、ツイッターで投稿される内容とは毛色が異なるという。
それでは他に、ツイッターの代替となり得るSNSはあるのか。篠原さんは「全てのSNSを触っているわけではない」と前置きの上で、「Bluesky」を挙げる。ツイッターの共同創業者が関わった招待制のSNSだ。
「招待制でまだあまり人が多くいないせいか、タイムラインは初期のTwitterのような空気が流れています。 『Twitter』がある限り代替にはなりえませんが、小規模な『Twitter』として今後も続いていくと思います」
(J-CASTニュース編集部 瀧川響子)