ウクライナのセルギー・コルスンスキー駐日大使が2023年7月10日に東京・丸の内の日本外国特派員協会で開いた記者会見で、「何度も繰り返したくはないが...」と会場からの質問に不快感を示す場面があった。
ロシアによるウクライナ侵攻は22年2月24日に始まり、23年7月9日で500日が経過。この節目を受けて開かれた記者会見で、コルスンスキー氏は冒頭発言で所感を述べた。その上で中盤に飛び出したのが「500日間をどう表現しますか」という質問だ。記者会見では、すでに発言した内容であっても、端的な発言を収録するために「改めて...」と、同様の答えを求める質問がテレビ局から出ることがある。この独特の慣例が問題になったと言えそうだ。
「冒頭発言を繰り返すように言っているのか?」
コルスンスキー氏は冒頭、13分間にわたって500日の間に世界がどのように変化したかを説明。日本からの支援に感謝した上で、
「我々は、二国間の支援だけでなく、民主主義共同体の一員としての日本の立場を非常に重視している」
などと話した。
コルスンスキー氏が不快感を示したのは、民放キー局所属を名乗る男性の質問だ。この日の記者会見は通訳がおらず、やり取りは英語で行う必要がある。「あまり英語が話せませんが」と断った上で「ロシアによる侵略の500日間をどう表現しますか」と質問した。
コルスンスキー氏が「すでにしたと思う」と応じると、男性は同じ質問を繰り返した。コルスンスキー氏は苦笑いしながら、隣の司会者に「冒頭発言を繰り返すように言っているのか?」と水を向け、司会者は「すでに冒頭発言で言っていると思う」と指摘。
男性が「もう1回、改めて...。すみません」と日本語で話し、司会者がコルスンスキー氏に発言を促すと、
「何度も繰り返したくはないが...」
と前置きした上で、2分45秒ほどかけて500日の意味を改めて説明した。
2分45秒かけて500日の意味を改めて解説
コルスンスキー氏は
「500日間で彼らが変えたのはウクライナだけではない。世界を変えたのだ。多くの地政学的問題に対する我々の態度を変えたのだ。私たちは世界秩序を変えるプロセスの触媒となった。これまで議論されてきたほとんどすべての問題に、この侵略の影響が見受けられる。私たちは、それを喜んでいるわけではない。500日間の戦争は望んでおらず、500日間の平和を望んでいた。しかし、それは私たちの選択ではなかった。私たちは今、できるだけ早く勝利と停戦を達成するために全力を尽くそうとしている」
などと話した。
コルスンスキー氏はこの中で、ウクライナから避難してきた人たちが地元料理をふるまうレストランが大阪市内にオープンし、避難民からの訴えを聞いてきたことを紹介。これは冒頭発言には含まれていなかったエピソードで、
「領土は解放されなければならない。それが我々の義務だ。再建し、人々を戻すことが我々の仕事だ」
と決意を新たにしていた。
(J-CASTニュース編集部 工藤博司)