「業務上の必要性・相当性が認められるか否か」
今回のケースは何らかのハラスメントに当たるのか。弁護士法人・響の古藤由佳弁護士は7月3日、「本件は、上司から部下への提案ということなので、『優越的な関係を背景とした言動』と言えます」と取材に回答。受け手が不快な思いをしているため、パワハラに当たるという。
また「成人した男女が同室に宿泊するという性的羞恥心や戸惑いを感じさせる提案は、当然のことながら業務上必要かつ相当な範囲を超えたものです」とも指摘する。この点でも、受け手が不快な思いをしているため、セクハラに該当するという。
似た事例は他にもあるのか。古藤弁護士は「職場で発生するハラスメントのほとんどは、業務上の必要性にかこつけて生じています」と説明する。
得意先との接待などは一般的に業務として存在し、こうした相手との関係性を保つことは当然必要であるとしつつも、「接待の内容として、単なる飲食を超えて、特定の性別であることを理由とした接待を強要されるような場合は、ハラスメントと判断される可能性が高い」と見解を示している。
受け手が不快だと感じつつも、相手の言動が仕事上のやり取りかハラスメントか分からない場合もあるだろう。その場合は、どのように判断すればよいのか。
相手の言動をハラスメントか判断する場合、法律的には「業務上の必要性・相当性が認められるか否か」が重要になるという。業務上の必要性がなかったり、合理的な範囲を超えたりする相手の言動で、受け手が不快になった場合はハラスメントだと、古藤弁護士は述べる。
また、「業務上、性的な言動が必要になる場面はありませんから、性的な言動によって、不快な思いをしたり職場環境が乱された場合にはすべてハラスメントと言えます」とも述べた。
古藤弁護士は、不快に感じた相手の言動について「仕事だから仕方ない」「不快に思うのがおかしい」などと思ってしまいがちだとし、「まぁいいか」の積み重ねでハラスメントはエスカレートしていくと説明する。
まずは周囲の同僚や友人に相談するのがよいという。その後、ハラスメントだと判断した場合は、会社のハラスメント相談窓口や加害者の上司に当たる人などに相談することを、古藤弁護士は勧めている。