コスプレ撮影で人気の「奈良県立民俗博物館」、臨時休館に予期せぬ注目 担当者驚かせた「支援の輪」

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   大正時代などの暮らしを伝える「奈良県立民俗博物館」の展示室が2023年夏の一部期間に空調設備の不具合で臨時休館することをめぐり、SNSでは、修理の予算がないのではないかと話題になった。

   担当者は6月27日、修理工事のために臨時休館するわけではないと取材に明かす。以前から空調の不具合が問題になっていた中、「あまりにも暑い」というクレームが2022年に相次いだため、「一番暑くなる期間は、もう休館しますっていう判断になったんです」と理由を明かした。

  • 奈良県立民俗博物館の公式ツイッターより(@naraminpaku)
    奈良県立民俗博物館の公式ツイッターより(@naraminpaku)
  • 実際に撮影されたコスプレ写真(同館提供/モデル・銀とき子さん)
    実際に撮影されたコスプレ写真(同館提供/モデル・銀とき子さん)
  • 実際に撮影されたコスプレ写真(同館提供/モデル・銀とき子さん)
    実際に撮影されたコスプレ写真(同館提供/モデル・銀とき子さん)
  • 奈良県立民俗博物館の公式ツイッターより(@naraminpaku)
  • 実際に撮影されたコスプレ写真(同館提供/モデル・銀とき子さん)
  • 実際に撮影されたコスプレ写真(同館提供/モデル・銀とき子さん)

「奈良県立民俗博物館が始まって以来のバズり方を見せました」

   奈良県大和郡山市にある奈良県立民俗博物館は、大正から昭和初期の生活用具などを展示しており、大和民俗公園の中に立地する。公園にも江戸時代の民家などが15棟あり、3棟は国指定重要文化財だという。

   民俗博物館では、古民家を活かしたコスプレ撮影も受け入れている。SNSでは、漫画『鬼滅の刃』やゲーム『刀剣乱舞』といったキャラのコスプレ写真がみられた。

   話題の発端は、23年6月22日のツイッター投稿だ。民俗博物館がこの日、同館で撮影されたコスプレ写真をツイッターで募集すると、同館が2023年7月4日~9月11日まで空調の不具合で臨時休館することを心配するユーザーの投稿が注目を集めた。

   投稿者は修理する予算がなくて困っているのではないかとし、他のコスプレイヤーに写真を提供するよう呼びかけた。この投稿は8500件以上のリツイートを集めるなど話題になり、民俗博物館の投稿も2500件以上のリツイートを集めた。

   今回の反響について、同館の担当者は6月27日、J-CASTニュースの取材に「奈良県立民俗博物館が始まって以来のバズり方を見せました」と振り返った。投稿後に集まったコスプレ写真の枚数を尋ねると、担当者は「まだ片手ですわ」とし、投稿後のコスプレ撮影申請もまだ来ていないと明かす。

「あまりにも暑いというクレームが相次いだ」

   コスプレ写真を募集した理由について、担当者はPR資料を作るためだったと説明。ツイッターの投稿でも「当館の広報(チラシやHP)、事業説明資料(国の補助金、予算要求)の素材にご提供いただけると助かります」と述べている。

   臨時休館を心配した話題の投稿について尋ねると、コスプレ写真の募集は臨時休館とは関係なかったと担当者は話しつつも、「ちょっと予算ないみたいやからみんな協力したってやという援護射撃のお気持ちはありがたい」と述べた。

   臨時休館中に、空調の修理工事が行われるわけではないという。「去年もエアコンがほとんどダメになってて、あまりにも暑いというクレームが相次いだんです」と、担当者は経緯を話す。

   23年度も空調設備を修理するための予算はついていない。こうした中で「やっぱりお金をもらって入館していただくことはできへんやろうという状況で、一番暑くなる期間は、もう休館しますっていう判断になったんです」と背景を明かした。

   民俗博物館は、ツイッターで「当館に御寄付頂ける場合は、その旨をご記載頂けますと幸甚です」と、自分の故郷や応援したい自治体などを選んで寄付できるふるさと納税を呼びかけている。

   しかし「正直募金では、中々修理費にはならんやろうな」との見立ても示す。担当者が2021年度に赴任する前から、建物の老朽化や空調設備が問題になっていて、修理費を算出したり、代替案を検討したりしたが、実際に修理するまでには至らない状況が続いた。

   「大金持ちのどなたかが出してくれたりしたら、また違うかもしれへん」と担当者は笑いながら話すが、募金による修理は現実的ではないとも打ち明ける。修理費を含む予算配分についても、民俗博物館の意思だけで決まるわけではない。

   今回思わぬ形で「臨時休館」に注目が集まったことに、担当者は次のように話した。

「SNSで皆さんがうちの博物館を大事に思ってくださることとか、気にかけていただいてることとか、実際にちょっと見に行ってあげようかなとかっていうのは、間接的にではあるんですけど、本当にありがたいと思ってるんです」

   SNSの反応が「みんなに望まれている施設です」とアピールすることに繋がり、あるいは予算の獲得にも影響するかもしれないと感謝を示している。

「文化財を大事に守ることが、大きな使命」

   奈良県立民俗博物館が今回提供を求めたコスプレ写真は、文化庁が後押しする事業「日本博2.0」に参加するための資料作りなどに使うという。「日本博2.0」は、2025年の大阪・関西万博に向けて日本文化を発信する事業だ。「日本の美と心」をコンセプトにし、参加する事業者に補助金の提供などを行い、日本文化を生かしていく。

   奈良県も「日本博2.0」に参加している。民俗博物館も「日本博2.0」の一環として古民家を活用したイベントを行っており、その1つとしてコスプレ撮影会を開いている。担当者は「恐らく来年も継続して、申請することになるだろう」と推測のもと、コスプレ写真を使ったPR資料を作ろうとしていた。

   コスプレ撮影会を開くことで、これまで民俗博物館に関心を持っていなかった人が新たに目を向けたり、コスプレイヤーとの関係を築いたり、綺麗な写真を発信できたりするメリットがある。担当者は、同館の魅力をさらに発信できると語った。

   同館でコスプレ撮影を行う人は、21年度は10人程度、22年度は40人程度と、年々増えている。23年度も「日本博2.0」の一環であるイベントを23年11月と24年2月に行い、コスプレ撮影会も開く予定だ。

   担当者によれば、21年度に初めてコスプレ撮影会を行ったという。すると、参加したコスプレイヤーから好評だったようで、「この事業を続けてほしい」との声が寄せられた。その後、徐々にコスプレ撮影する人が訪れてくるようになった。

   コスプレ撮影を行うためには、撮影内容などについて事前の打ち合わせが必須になる。また、誓約書などの書類を提出する必要もある。こうした厳しい手続きが必要になる理由について、担当者は「博物館は基本、文化財を大事に守ることが、大きな使命なんです」と述べる。

   事前に厳しい手続きがあるため、多くの人が参加できるわけではない。担当者は「公にオッケーしているのはかなり冒険なんですよ。業界の中で『何やってんねん』と言われかねへんリスクは背負うことになりますので」と、コスプレ撮影会を受け入れることの難しさを吐露する。

   しかし、近年は文化財を保存するだけではなく活用する方向に向かう流れになっているという。担当者は「活用方法を考えていく時代になってんのかな」と話し、文化財を大切に扱ってくれるコスプレイヤーに撮影の機会を提供していきたいとの考えを示している。

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