「文化財を大事に守ることが、大きな使命」
奈良県立民俗博物館が今回提供を求めたコスプレ写真は、文化庁が後押しする事業「日本博2.0」に参加するための資料作りなどに使うという。「日本博2.0」は、2025年の大阪・関西万博に向けて日本文化を発信する事業だ。「日本の美と心」をコンセプトにし、参加する事業者に補助金の提供などを行い、日本文化を生かしていく。
奈良県も「日本博2.0」に参加している。民俗博物館も「日本博2.0」の一環として古民家を活用したイベントを行っており、その1つとしてコスプレ撮影会を開いている。担当者は「恐らく来年も継続して、申請することになるだろう」と推測のもと、コスプレ写真を使ったPR資料を作ろうとしていた。
コスプレ撮影会を開くことで、これまで民俗博物館に関心を持っていなかった人が新たに目を向けたり、コスプレイヤーとの関係を築いたり、綺麗な写真を発信できたりするメリットがある。担当者は、同館の魅力をさらに発信できると語った。
同館でコスプレ撮影を行う人は、21年度は10人程度、22年度は40人程度と、年々増えている。23年度も「日本博2.0」の一環であるイベントを23年11月と24年2月に行い、コスプレ撮影会も開く予定だ。
担当者によれば、21年度に初めてコスプレ撮影会を行ったという。すると、参加したコスプレイヤーから好評だったようで、「この事業を続けてほしい」との声が寄せられた。その後、徐々にコスプレ撮影する人が訪れてくるようになった。
コスプレ撮影を行うためには、撮影内容などについて事前の打ち合わせが必須になる。また、誓約書などの書類を提出する必要もある。こうした厳しい手続きが必要になる理由について、担当者は「博物館は基本、文化財を大事に守ることが、大きな使命なんです」と述べる。
事前に厳しい手続きがあるため、多くの人が参加できるわけではない。担当者は「公にオッケーしているのはかなり冒険なんですよ。業界の中で『何やってんねん』と言われかねへんリスクは背負うことになりますので」と、コスプレ撮影会を受け入れることの難しさを吐露する。
しかし、近年は文化財を保存するだけではなく活用する方向に向かう流れになっているという。担当者は「活用方法を考えていく時代になってんのかな」と話し、文化財を大切に扱ってくれるコスプレイヤーに撮影の機会を提供していきたいとの考えを示している。