東京電力福島第1原発事故と対峙(たいじ)する人々をドラマ化した「THE DAYS」上映会が2023年7月5日に東京・丸の内の日本外国特派員協会で開かれ、主演の役所広司さん(67)らが記者会見した。
役所さんが演じたのは当時の吉田昌郎所長(故人)。「歴史上の人物を演じるよりも、非常にまだ時間も短い」ため、撮影現場では皆が「演じすぎない」ことを心がけたという。国内では原発の運転期間延長を盛り込んだGX(グリーントランスフォーメーション)脱炭素電源法が成立し、ウクライナではザポリージャ原発がロシアに占拠されるなど、世界的に原子力に向き合わなければならない状況が続く。役所さんは国内の原発のあり方について「国民が結論を出していかなければいけない問題」だと話した。
「歴史上の人物を演じるよりも、非常にまだ時間も短いし...」
ドラマは2011年、わずか12年前の出来事がモデルで、ドキュメンタリーに近い表現方法を模索したという。役所さんによると「歴史上の人物を演じるよりも、非常にまだ時間も短いし、観客の人たちも非常に生々しい記憶がある」。撮影現場では皆が
「『エンターテインメントしすぎないドラマ』として、『演じすぎない』ということ」
ことを心がけた。その思いを次のように話した。
「あそこ(原発)で働いて行動していた人たちはこういう気持ちで行動したか、こういう気持ちで苦しんだか...ということを演じるというのを、何か非常にドキュメンタリーに近いような表現方法を見つけて、作っていったような気がする」
記者からは
「12年たった後、今、原発についてどのような考えをお持ちなのか」
という質問も出た。プロデューサーの増本淳さん(47)が
「そもそも関心がない中で、どんどん原発の再稼働と新規建設、寿命の延長が起きているということ自体が、僕自身は問題だと思っている。やれる役割としては、そこにみんな興味を持って、もっと議論を活発にしてもらえればいいのかな、ということを考えている」
と答えたのに続いて、役所さんは
「もちろんこうやって事故が起きたり、地震が起きたり津波が来たりして、原子力発電所が、トラブルが非常に怖いものであることはみんな分かっている。そういうものを使わずに僕たちが普段湯水のように使っているこの電力が手に入れば、それ以外のものがいいに決まっている」
などと、原発を抜きにしたエネルギー供給の課題に言及した。
地上波では「企画はおそらく100%通らない」
役所さんは原発事故をドラマ化することに「大丈夫だろうか」と不安があった一方で、増本さんの「ライフワークとして描いていきたいという思い」を理由に作品への参加を決めたことを明かした。その上で、原発のあり方について次のように述べた。
「今世界中が本当に混乱している中でも、エネルギーについてはもう本当にみんなが考えなければいけないことだと思う。日本の国内でも、この原子力発電所について、国民が結論を出していかなければいけない問題だと思う。そういう意味で、この『THE DAYS』というドラマを見て、もう1回エネルギーについて考える人が増えるといい」
ドラマは全8話。6月1日からネットフリックスで全世界配信されている。役所さんは新たなプラットフォームで作品を展開する意義を
「地上波のドラマでは、この『THE DAYS』というのは、内容的に企画はおそらく100%通らないと思う。そういう意味では、この『THE DAYS』の内容を伝えるには、この配信というのが一番自由度が高いし、自分たちが思ったものを表現できるのではないか」
と話した。
(J-CASTニュース編集部 工藤博司)