「日本を活用したい」北朝鮮の思惑 官房長官は水面下での接触否定も...日朝が協議する可能性は

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田中さんらの対応先行させる「段階的解決論」は受け入れられるか

   日本側が「全員」にこだわらなければ北朝鮮側の対応が変わりうるとも読める書きぶりで、日本側は難しい対応を迫られそうだ。これまでに、少なくなくとも2人について北朝鮮で生存している可能性が指摘されているが、日本政府は事実上「黙殺」する状態が続いているからだ。

   2人は、政府が北朝鮮からの拉致被害者として認定している神戸市の元ラーメン店員、田中実さん=失踪当時(28)=と、政府が「拉致の可能性が否定できない」としている金田龍光さん=同(26)=。2人が北朝鮮に入国したとの情報を日本政府が北朝鮮から伝えられていた、などと共同通信が2018年に報じて、22年9月には、北朝鮮との交渉に携わってきた斎木昭隆・元外務事務次官も朝日新聞のインタビューに対して同様の発言をしている。

   ただ、政府は

「具体的内容や報道の一つ一つについてお答えすることは差し控えたい」

などと繰り返し、事実関係の確認を避けている。

   拉致被害者家族会は、前出の集会の名称にもあるように「全拉致被害者の即時一括帰国」を主張。仮に田中さんらの対応を先行させるとすれば、いわば「段階的解決論」を採用することにもなり、家族会の理解を得られるかは未知数だ。

   そんな中で出たのが冒頭の東亜日報の報道で、記事では

「北朝鮮はこのような(バイデン政権で米朝関係が進展しない)苦しい膠着状況で、何らかの局面転換のための『テストケース』として日本を活用したいと思っている」

との見立てを紹介している。

   南北関係悪化も、北朝鮮が日本に接近する一因のようだ。22年5月に韓国で発足した尹錫悦(ユン・ソンニョル)政権は、韓米同盟の強化や北朝鮮への強硬姿勢を打ち出した。23年に入ってから訪日も実現してシャトル外交が復活。日韓関係の改善が進んだ。同じ記事では、

「南北関係が硬直した状況で、日朝対話が韓国政府にとって好ましくないという指摘も出ている」

などと背景を説明。尹政権としては、日韓米の3か国が連携して北朝鮮に圧力をかけ、北朝鮮が自ら交渉のテーブルに出てくる構図を描いているが、

「北朝鮮が拉致問題の解決を望む日本を通じて、このような構想に亀裂を作ろうと試みる可能性がある」

ためだ。

   松野氏は東亜日報の記事について、

「報道については承知しているが、そのような事実はない」

と答弁している。

「こういった場合、『ひとつひとつの交渉についてコメントしない』ということが通例だと思うが、今回は事実無根ということでいいのか」

という確認には、

「先ほど申し上げた通りだ」

とのみ応じた。

(J-CASTニュース編集部 工藤博司)

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