ソ連対日参戦で「多くの命救った」「岸田政権は歴史直視せず」 ロシア報道官が正当化

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   ロシア外務省のザハロワ情報局長が2023年6月28日の記者会見で、1945年8月9日にソ連が日ソ中立条約を無視して対日参戦したことを「流血を終わらせる決定的な貢献」だったと正当化し、「日本列島に住む何百万人もの一般市民を含む多くの人々の命を救った」と主張した。

   ロシアが「第2次世界大戦終結の日」としてきた9月3日の名称を「軍国主義日本に対する勝利と第2次世界大戦終結の日」に変更し、それを日本政府が批判していることへの見解を問われる中での発言だ。これまでもロシアは対日参戦の正当性を主張してきたが、ロシアのウクライナ侵攻による日ロ関係の悪化を受けて、主張の先鋭化が進んでいる。

  • 記者会見するロシア外務省のザハロワ情報局長(写真はロシア外務省のウェブサイトから)
    記者会見するロシア外務省のザハロワ情報局長(写真はロシア外務省のウェブサイトから)
  • 1945年9月2日にミズーリ号上で行われた無条件降伏文書調印式でスピーチする連合軍最高司令官のダグラス・マッカーサー元帥。ソ連はこの翌日、9月3日に記念式典を開き「第2次世界大戦終結の日」としてきた
    1945年9月2日にミズーリ号上で行われた無条件降伏文書調印式でスピーチする連合軍最高司令官のダグラス・マッカーサー元帥。ソ連はこの翌日、9月3日に記念式典を開き「第2次世界大戦終結の日」としてきた
  • 記者会見するロシア外務省のザハロワ情報局長(写真はロシア外務省のウェブサイトから)
  • 1945年9月2日にミズーリ号上で行われた無条件降伏文書調印式でスピーチする連合軍最高司令官のダグラス・マッカーサー元帥。ソ連はこの翌日、9月3日に記念式典を開き「第2次世界大戦終結の日」としてきた

「日本の非友好的な政策に対する対抗措置」の一環

   第2次世界大戦終結を記念する日は国によって様々だが、ソ連の場合は日本がポツダム宣言による降伏文書に調印した1945年9月2日の翌日、9月3日に記念式典を開いたことにちなむ。この9月3日の名称を変更する法案は「日本の非友好的な政策に対する対抗措置」の一環で、23年6月20日にロシア下院、翌6月21日に上院でそれぞれ可決。プーチン大統領が6月24日に署名して成立した。

   松野博一官房長官は6月26日の記者会見で、この経緯を

「今回の法律の成立は、ロシア国民の反日感情を煽るのみならず日本国民の反ロ感情を煽ることにもつながりかねないものであり、大変遺憾」

だと批判。ロシア側には「国民の間に無用な感情的対立を殊更に作り出すことがないよう適切に対応することを求めた」と説明していた。

   松野氏の発言への見解を問われたザハロワ氏は、

「岸田政権が歴史を直視しようとせず、過去の出来事に対する歪んだ認識を押し付けようとしていることを改めて浮き彫りにしている」 などと批判した上で、対日参戦をめぐる主張を展開した。
「日本は1945年のポツダム宣言への参加を拒否し、早期講和の機会を生かせなかった。その結果、ソ連は連合国の義務を忠実に守り、極東における大日本帝国軍との戦争に参戦せざるを得なくなった。これは流血を終わらせる決定的な貢献となり、日本列島に住む何百万人もの一般市民を含む多くの人々の命を救った。日本国民はこのことを知っているだろうか?知らないと私は確信している。例えば、(日本国民は、原爆投下)決定の理由は言うに及ばず、誰が日本に原爆を落としたのかも知らない。赤軍は日本の軍国主義者を打ち破り、その支配を終わらせた」

2020年にも対日参戦が「日本の軍事行動継続の意欲を失わせた」と主張

   その上で、9月3日の新たな名称を「国際社会全体にとって極めて重要であることを証明した78年前(1945年)の重大な出来事と完全に一致している」と主張。松野氏の発言を改めて批判した。

「日本政府は不満を言うのではなく、この記念日で浮き彫りになった歴史的な出来事から痛切な教訓を得て、第2次世界大戦の結果を完全に認識し、世界の人々と日本自体に悲しみと苦しみをもたらした報復主義と日本の軍国主義への回帰を断念すべきだ」

   ロシアはこれまでにも、対日参戦を正当化してきた。ただ、今回のザハロワ氏の発言は対日参戦が多くの人命を救ったと明示的に主張した点で、従来よりも踏み込んだと言えそうだ。原爆投下から75年になる節目にあたる20年8月6日の広島の「原爆の日」に合わせてラブロフ外相が出した談話では、

「連合国間の合意の一環として行われたソ連の極東攻勢は、中国と朝鮮を解放しただけでなく、日本の軍事行動継続の意欲を失わせた」

と対日参戦を正当化する一方で、米国による原爆投下を「武力の誇示であり、民間人に対する核兵器の運用実験」だったと非難していた。

(J-CASTニュース編集部 工藤博司)

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