80年前に持ち込まれた品種改良以前の「懐かしい味」
現地で流通しているみかんは、日本の市場に出回っているものよりも糖度が低い。しかし程よい甘みや酸味にどこか懐かしさが感じられたと、向山さんは話す。
向山「率直に美味しかった。日本のミカンは品種改良が進んで甘くなっており、それを好む人も多いと思います。一方でペルーのミカンは80年前に持ち込まれたときのもの。甘さだけでなく酸味もある。日本の方に試食してもらうと『美味しい』『懐かしい』という声が寄せられました」
村上さんは、日本の市場で受け入れられるような品質の良いみかんを生産できる園地を探し始めた。輸入の壁となるのが防腐剤など添加物の問題だ。長い航海日数を耐えるために用いられるが、日本向けのみかんに用いることができる添加物は厳しく定められている。
村上「みかん(温州みかん)に利用できる添加物は非常に限られています。柑橘類で認められ食品添加物であっても、みかんだけは除外されていることがあります。他国のみかんに似た果物、例えば同じミカン科に属するマンダリンオレンジやマーコットは『みかん』として輸入できません」
さらに村上さんは、「日本の人々にとってみかんは、美味しいのが当たり前だと思われている」と強調する。他の柑橘類と比べても、消費者の求めるクオリティが高いのだという。
村上「海外では日本ほど品質をあまり気にしないようですが、日本ではシーズン開始時に不味いものを置いてしまえば売り場に人が戻りません。
糖度、酸度、大きさ、色などいずれも高い品質が求められます。他国向けの生産ラインとは別に、日本専用に栽培しなければいけません。非常に手間がかかることです」
農家との交渉では、「そんな面倒なことをするくらいなら他国に輸出する」などと言われることもあったという。
村上「パートナーの輸出会社の社長も協力してくださり、交渉を進めました。その結果、協力してくださる農家さんも現れました。日本にルーツを持つ日系の方々ですので『故郷に恩返しができる』『ペルーで育ったみかんを初めて日本に里帰りさせることができる』などと趣旨に賛同してくださりました」