日本ボクシングコミッション(JBC)は2023年6月30日に東京都内で実行委員会を開き、5月に行われたプロボクシングの興行に出場した2人のナイジェリア人が申請された選手とは別人でプロライセンスを持っていなかったことを発表した。スポーツ紙などが同日報道した。
「情報化社会の現代においてこのようなことが...」
報道によると、5月14日に北海道・札幌で行われた興行に2人のナイジェリア人が出場。2人は平仲BSジム所属の日本フェザー級1位リドワン・オイコラ(26)と、タレントで格闘家のボビー・オロゴン氏(50)の子息ジェイジェイ・オロゴン(23)とそれぞれ対戦し、ともに1回KO負けを喫した。
負けた2人は、プロモーターの平仲信明氏(59)がJBCに申請していた選手とは別人の素人で、日本国内在住のナイジェリア人だったという。同興行は平仲氏が主催し、オロゴン氏が知り合いのナイジェリア人にマッチメークを依頼したという。
プロライセンスを持たない「素人」が試合した今回の「替え玉」事件。日本ボクシング界を揺るがした今回の騒動をボクシング関係者はどのように受け止めているのか。J-CASTニュースは、数々の世界戦をプロモートしてきた経験を持つTMKジムの金平桂一郎会長(57)に話を聞いた。
平仲会長と親交があるという金平会長は「情報化社会の現代においてこのようなことが起きたことに正直驚いています」と率直に胸の内を明かした。金平会長によると、外国から選手を招へいする際には選手の成績を証明する書類やビザが必要になるケースもあり、許可を出すJBCは厳しく目を光らせているという。
過去には韓国の世界戦で「替え玉」事件
金平会長は、プロモーターとして今回のような素人をリングに上げることは全くメリットがなく、むしろリスクしかないと指摘する。真実が発覚した場合プロモーターライセンスの停止処分などの可能性があり、プロモーターとしての信頼が失墜する。このようなことから金平会長は「平仲会長に悪意は感じられませんが、プロモーターとしての責任はあると思います」と語った。
金平会長によると、過去にも国内で同様の「替え玉」事件があり、来日したタイ選手が申請していた選手とは別人だったという。84年に韓国で行われた世界戦では申請していた挑戦者とは別人がリングに上がりKO負け。韓国人王者は防衛に成功したが、後日「替え玉」が発覚し興行を主催したプロモーターら関係者が詐欺の疑いで逮捕されたという。
今回「替え玉」としてリングに上がった2人はともに1回KO負けを喫したが、金平会長は「大きなケガがなかったことが不幸中の幸いだと思います」と指摘し、次のように持論を展開した。
「もしものことがあった場合、ボクシング界にとっても大事になります。近年、ボクシング界は選手の健康管理に力を入れており、安全面にも気を配っています。海外から招へいする選手も同じく細心の注意を払います。何かあってからでは遅いので、選手の実力や戦績を十分に考慮した上で招へいします。恐らく平仲会長も慎重に調査をしたと思いますが、最終的なチェックが足りなかったのでしょうか。このようなことになってしまい残念に思います」
スポーツ紙などの報道によると、平仲氏は30日に会見を行い「替え玉」の事実を認めた上で、「ボクシング界、協会などに迷惑をかけて申し訳ありませんでした」と謝罪したという。