長らく品切れとなり絶版となっていた人文書「中世への旅」シリーズ3冊が、全国の書店で購入できるようになる。異例のヒットの火付け役となった東京・神保町の書店「書泉グランデ」が2023年6月26日、ツイッターで告知した。
「中世への旅」は、RPGゲームなどの舞台として人気を博する中世ヨーロッパの暮らしを伝える専門書で、ツイッターでは「書店さんに並ぶの楽しみです!」などと喜びの声が広がっている。
書店員が入手困難な本の「買い切り」を企画
プレスリリースなどによれば、発端は書泉グランデの店員がシリーズに着目したことだった。
1作目の「中世への旅 騎士と城」(白水社、ハインリヒ・プレティヒャ著、平尾浩三訳)は、ヨーロッパの騎士たちの城での生活、食物と衣服、日々の仕事と娯楽など、日常生活を紹介する。1982年に発売され、2010年に新書版が出版されたが、その後は入手しづらくなっていた。
書泉グランデの店員は、白水社に対し、同書を買い切ることを条件に重版する企画を持ち掛けた。3月のイベントに合わせて重版が実現するも、用意した300冊はすぐに完売したという。
ライトノベル作家・SOWさんが一連の経緯をツイッターで紹介したことで、さらに注目が高まった。続くツイートでは「現在に続くまでの、本邦ファンタジー作品の原典」だと説明し、多くの作品が影響を受けていると推察を述べる。このツイートは2万件を超えるリツイート、5万件を超える「いいね」が寄せられるなど大きな反響があった。
その後、受注生産が行われると1万2000冊を超える予約があった。4月には絶版していたシリーズ続編も、新書版にリニューアルの上で受注販売することになった。こうしてシリーズ3冊は、買い取った書泉グランデと一部書店で販売されるようになった。
「書泉さんの太っ腹なご提案で、一般流通させていただくことに」
3月から書泉グランデによる独占販売が続いたが、今後は全国の書店で購入できるようになる。書泉グランデがツイッターで次のように告知した。
「白水社さんの方で、なんと『6月末 重版出来』となりました。つまり、全国の本屋さんでお買い求めいただけます! このシリーズを本当に多くの人に知っていただきたい、読んでいただきたいと願っていましたので、めちゃくちゃ嬉しいです!」
白水社も「書泉さんの太っ腹なご提案で、一般流通させていただくことになりました!」と発表した。
ファンからは「今度こそ買う!」「定価で買えてホンマ嬉しい」などと喜ぶ声や、経緯を受けて「書店員さんすごいなー!!」などと驚く声が広がった。
「中世への旅 シリーズ」ついに、全国の書店で買えるようになります!
— 書泉グランデ | 神保町 (@shosengnd) June 26, 2023
3月より、弊社で独占販売させていただいていました
「中世への旅 騎士と城」
「中世への旅 都市と庶民」
「中世への旅 農民戦争と傭兵」
ですが、白水社さんの方で、なんと「6月末 重版出来」となりました。… pic.twitter.com/S3aWuQ7BEf