成田-佐賀便、利用者激減で運休に 記者が体験した「寂しい最後」

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   日本航空(JAL)傘下の格安航空会社(LCC)、スプリング・ジャパン(旧春秋航空日本)が運航してきた成田-佐賀便が2023年6月24日の便を最後に運休した。コロナ禍で落ち込んでいた乗客数が回復しないことに加えて、限られた飛行機を今後の需要回復が見込める中国便に振り向けるのが目的。

   記者は成田→佐賀の最終フライトに搭乗。特段のセレモニーは行われず、搭乗率は50%未満だった。佐賀空港に乗り入れる国内線としては唯一存続する羽田線が「コロナ前」同様の水準に回復しつつあるのとは対照的に、きわめて地味なラストフライトになった。

  • 佐賀空港に到着したスプリング・ジャパンのIJ701便。休止前のラストフライトだったが、搭乗率は5割を切っていた
    佐賀空港に到着したスプリング・ジャパンのIJ701便。休止前のラストフライトだったが、搭乗率は5割を切っていた
  • 成田空港出発ロビーの「佐賀行き」表示。特段のセレモニーは行われなかった
    成田空港出発ロビーの「佐賀行き」表示。特段のセレモニーは行われなかった
  • 佐賀空港に到着したスプリング・ジャパンのIJ701便。休止前のラストフライトだったが、搭乗率は5割を切っていた
  • 成田空港出発ロビーの「佐賀行き」表示。特段のセレモニーは行われなかった

「弊社はこれからも中国路線を中心に、国内は札幌・広島に」

   スプリング・ジャパンは14年8月、「春秋航空日本」として国内線3路線の運航を開始。佐賀線はそのうちのひとつだった。総じて利用状況は好調で、コロナ禍に突入する直前の19年度には12万4386人が利用し、搭乗率は78.1%を記録した。だが、20年度は1万3335人(28.7%)、21年度は1万3918人(31.2%)と利用が激減。22年度は1万9057人(41.8%)と若干持ち直したものの、22年10月下旬からの冬ダイヤでは、週3往復のフライトが毎週土曜日の1往復に減少。直近の23年5月は685人(45.3%)で「コロナ前」の19年5月(9977人、71.3%)と比べても厳しい状況が続いていた。

   運航休止前のラストフライトになった成田発佐賀行きのIJ701便に搭乗したのは90人程度。スプリング・ジャパンが運航しているボーイング737-800型機は189人乗りで、最終便でも搭乗率は50%に満たなかったことになる。特段のセレモニーなどは行われなかったが、飛行中の機長アナウンスで運航休止に触れた。

「誠に勝手ながら本日のこのフライトを最後に、スプリング・ジャパンは、この成田-佐賀路線をしばらく運休させていただくことになりました。長い間、佐賀県民の皆様に、そして九州をはじめ多くの皆様に支えていただきまして、誠にありがとうございます」
「運休することによって、皆様にご不便ご迷惑をおかけしますことを心よりお詫び申し上げます。本日が、残念ながら我が社にとって最後の佐賀の着陸になりますが、弊社はこれからも中国路線を中心に、国内は札幌・広島に運航してまいる所存でございます」

   機長がアナウンスを終え、客室乗務員(CA)が頭を下げると、乗客からは拍手も起きた。

羽田便は「コロナ前」に回復、台北便は搭乗率93.6%

   運休が発表されたのは4月21日。佐賀県は、運休の理由を次のように説明していた。

「スプリング・ジャパン株式会社は、コロナ禍後の成長に向けて、収益性を向上させ財政基盤の強化を図るため、限られた機材を、中国線を中心とする国際線に集中させる方針であり、佐賀便については、7月から増便を予定している国際線の一部とダイヤが重複してしまうため」

   スプリング・ジャパンは5月26日、6月25日から8月31日にかけて成田-寧波(中国・浙江省)線を運航することを発表している。同社としては、佐賀よりも寧波の方が利用が見込めると判断したとみられる。

   今回の成田-佐賀便の運休で、佐賀空港に乗り入れる国内線は全日空(ANA)が1日5往復させる羽田便のみとなる。23年5月の利用者数は3万7378人で、搭乗率は66.4%。19年5月(3万9554人、71.8%)と比べると、利用者数ベースで94.5%の水準に回復している。

   国際線は最も多い時(18年12月~19年5月)で上海、ソウル、釜山、大邱、台北の5路線が乗り入れていたが、20年3月までに全路線が運休した。23年4月に台北便が復活し、5月には2682人が利用。搭乗率は93.6%をたたき出した。中国や韓国路線も高い需要が見込まれ、再開に向けた調整が続いている。

(J-CASTニュース編集部 工藤博司)

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