海外視点の「日本のクールなポップカルチャー」を参考に
芦澤さんは、スポティファイではこれまでアニメに関連する楽曲が世界中で聞かれる傾向が強かったと説明する。
大手音楽系事業統括会社・ソニー・ミュージックエンタテインメントが、1995年にアニメ配信を手掛ける子会社「アニプレックス」を立ち上げて以降、アニメと音楽を連動させるビジネスは加速したという。2000年代には「鋼の錬金術師」、「BLEACH」、「NARUTO」などの主題歌やエンディングテーマが世界で聴かれていた。
さらに昨今は、スポティファイともコラボレーションを行った劇場版アニメ「ONE PIECE FILM RED」や「すずめの戸締まり」のように、「音楽とアニメの相乗効果による進化した取り組みも生まれている」という。
「逆に、アニメとタイアップを獲得しなければ、日本の音楽が世界で聴かれづらいのではないかという発想が広がっていました。
今は、その状況に変化が生じています。ストリーミングの広がりも後押しし、必ずしもこの枠組みにあてはまらずとも世界で聴かれる機会が増えました。そういった世界に進出する可能性のある日本の楽曲を詰め込んだプレイリストがGacha Popです」
背景としてスポティファイでは現在、アニメ作品のテーマ曲だけでなく、シティポップ、ローファイヒップホップ、「ボーカロイド」などの音楽ソフトで作った楽曲、VTuberによる楽曲など、多様な音楽が海外で聴かれているという。
「ここ数年海外でバイラルヒットとなった代表的な国内アーティストの楽曲としては、松原みきさんの『真夜中のドア~Stay With Me』、YOASOBIの『夜に駆ける』、藤井風さんの『死ぬのがいいわ』などが挙げられます。これらのヒットはバラバラの現象に見えますが、拡散の過程にアニメーションによる表現が加わるといった共通点がありました」
アーティスト写真やミュージックビデオがアニメ風だったり、リスナーがアニメのワンシーンを想起させる内容とともにSNSなどで音楽を拡散したりしていた。さらに海外のアニメ好きの配信者がカバーした楽曲が注目を集めることもあった。
「楽曲自体はアニメ曲ではなくてもアニメ風な表現と掛け合わせられることによって、アニメやゲームなどに隣接する『日本のクールなポップカルチャー』という別の価値観で海外の人々を魅了していたのではないかと、仮説を立てました」