2023年6月19日に放送された「風間公親-教場0-」(フジテレビ系)最終回の世帯視聴率が10.6%だったと20日、各メディアで報じられた。報道に対してはインターネット上で「未だに視聴率とか言っている業界関係者やマスコミ、企業は時代に取り残されていると思う」といった声もあがっている。視聴率とその報道には現在どのような意味があるのか、J-CASTニュース編集部は識者に意見を求めた。
「今どきは録画や見逃し配信で両方見ることができる」
視聴率についての報道に疑問を呈する声は、ドラマの視聴率がニュースになるたびに上がってきた。4月期の他のドラマについての記事に対してもあった。4月19日に一部メディアがニュースサイトに配信した、同じ曜日、同じ時間帯に放送された「私のお嫁くん」(フジテレビ系)と「それってパクりじゃないですか?」(日本テレビ系)の視聴率を比較した記事に対しては、
「今どきは録画や見逃し配信で両方見ることができるんで、こういうのを対決だの勝敗だのと煽っても視聴者にとっては何の意味もない」
「そもそも今の視聴率は正しい数字を反映していない」
といった、視聴率が客観的なデータとは呼べないのではないかとする声がコメント欄に投稿されていた。
「世帯視聴率の報道には意味がないと言えます」
「視聴率には意味があるのか?」「視聴率を報じることに意味はあるのか?」といった問いに対し、放送コラムニストの高堀冬彦氏は取材に、視聴率のうち「世帯視聴率の報道には意味がないと言えます」と指摘。その理由として、「『何軒で観られたか』を調べるもので、視聴者総数すら分からないからです」と説明する。続けて、
「個人視聴率は1%が関東で約42万人。はっきりしています。男女別、年齢別などの視聴率も出ます。コア視聴率(13~49歳の視聴率)も個人視聴率を使って出します」
と指摘。2020年3月末以降、個人視聴率の調査が全国で適用されるようになっていることから、
「もう世帯視聴率なんてテレビの現場では使われていないのです。新聞も個人視聴率と世帯視聴率を併記するようになりました。その大半は個人視聴率優先です。いずれは個人視聴率に一本化されるでしょう」
と、近年の動きや変化にも触れた。「もう世帯視聴率の時代ではないことが浸透されるべきです」との考えも示した。
視聴率を報じることの意味とは
その一方で、視聴率を報じることに意味はあると指摘する。高堀氏は1つ目として、
「『大人気番組』という触れ込みなのに本当は低視聴率ということがよくあります。視聴率を把握することによって、欺かれずに済みます」
と説明。2つ目として、
「世間の関心が掴めます。ベストセラーランキング、家電などの売れ筋ランキングと一緒です」
と、その利点を明かす。さらに、3つ目として、
「番組選択の判断基準になります。高視聴率だから『1度観ておくか』という人もいるでしょうし、逆に『世間に流されたくない』と思い、見ない人もいるでしょう」
と、判断の目安になると明かした。
「TVerの再生回数も人気度の指標にしようとする動きがあるが、これは難しい」
近年ツイッターなどでは「TVer再生回数やお気に入り登録数も加味しないと本当の人気は分からん」といった声もある。高堀氏は「TVerの再生回数も人気度の指標にしようとする動きがあるが、これは難しい。各局でスタートラインが大きく違うためです」との見解を示す。
「スタートラインを変えているのは各局の有料動画配信サービス」だとして、日本テレビの「hulu」、テレビ朝日の「TELASA」、TBSとテレビ東京の「U-NEXT」、フジテレビの「FOD」の会員数がそれぞれ異なることを指摘し、こう続けた。
「これらの会員は放送中のドラマもCMなしで観られますからTVerはまず使わない。TVerにはCMがあるし、一定期間が過ぎると観られなくなってしまうので、会員は使わないでしょう。すると、有料動画配信の会員数が少ない局ほどTVerの再生回数では有利になってしまいます。各局が同条件にはならないので、これでは指標になりにくい。そもそも高視聴率番組ほどTVerで再生されないというジレンマもあります」
高堀氏は、「TVerの位置付けは民放連が声明を出すべきだと思います」とも指摘した。
(J-CASTニュース編集部 坂下朋永)
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