解散総選挙がいったん遠のき、立憲民主党内の路線対立が顕在化してきた。泉健太代表は、日本維新の会や共産党とは選挙協力をせずに、立憲が自力で選挙戦に臨むべきだとする立場を取っている。一方で、小沢一郎衆院議員らは「野党候補の一本化で政権交代を実現する有志の会」を結成して2023年6月16日に記者会見を開き、他の野党との候補者調整の必要性を訴えた。
泉氏は、小沢氏が「有志の会」発足を紹介するツイートを引用しながら「維新、国民、共産、れいわ...。野党は幅広い」と書き込んだ。各党は独自に候補者擁立を進めており、すでに競合する選挙区も多い。こういった状況での一本化は容易ではなく、泉氏は難しい対応を迫られそうだ。
「他党に頼らないということ、これがまず大事」
泉氏は5月19日の記者会見で、共産党との選挙協力に否定的な理由を問われて、
「立憲民主党の私たち、そして候補者すべては、他党に頼らないということ、これがまず大事」
「例えば、もう政策協議が終わって一緒にやる、ということが明確になっているのであれば、それは何らかの選挙協力だとかという話はあるとは思うが、今どこかの党とそのような状況にあるわけではないときに、数字だけを期待するという考え方では絶対に小選挙区では勝てないと思う」
などと話していた。「有志の会」発足は、こういった発言への危機感が背景にある。「有志の会」記者会見での説明によると、立憲に所属する衆院議員97人のうち53人から賛同の署名を集めたという。
現時点で「有志の会」と泉氏の温度差は大きい。6月16日の定例会見では、「有志の会」の動きについて問われて、「ちょっと私は同時進行的だったので見てないんですけど、どなたが会見をされた?」と記者に逆質問。記者が小沢氏や小川淳也衆院議員の名前を挙げると、
「他党がなかなか(候補者調整に)応じない、難しいという状況の中でどういった手法があるのか、考えられるのかというのは、ぜひ率直に意見を聞きたい」
と応じ、立憲側から候補者一本化を呼びかけることの難しさを説明した。
「他党が例えば、野党で候補者を一本化するつもりがないと言っている時に立憲民主党がひたすら、ただ『一緒にやろうよ、やろうよ』と呼びかけていれば、立憲民主党自身の、例えば(野党の候補者が乱立して与党系候補が勝利した)千葉5区における主体性というものも、ずっと中途半端なままになってしまう」
立憲・共産はすでに10選挙区超で競合
泉氏は次期衆院選で150議席を獲得できなければ辞任する考えを表明している。現時点で候補予定者は150に達していないが、泉氏は会見で
「来週中にも150名はクリアするという状況」
と話した。ただ、6月19日時点で立憲のウェブサイトに「次期衆院選公認候補予定者」として名前が掲載されているのは51人にとどまっている。共産は現時点で小選挙区だけで50人を公認することを発表しており、すでに10以上の選挙区で立憲と競合している。維新は全289小選挙区での擁立を目標にしており、維新の音喜多駿政調会長は6月18日に公開した動画で、今回の動きを「彼らの主張というのは、徹頭徹尾『自分たちは降りない、自分たちは選挙に勝ちたい、だからお前が降りてくれ』でしかない」と非難した。
一本化には、こういったハードルを越えていく必要があるが、泉氏は実現可能性に疑問を持っているようだ。小沢氏は「有志の会」会見後、
「心ある勢力を結集して自民党を倒し、政権交代を実現するために全力で闘って参ります」
などとツイート。
泉氏はこれを引用して「維新、国民、共産、れいわ...。野党は幅広い」。次のように続けた。
「実際にどのように実現していこうとの構想であるか。数々の大勝負を経験してこられた大先輩の小沢一郎議員をお招きし、近日中にもお話を伺いたい」
小川氏はツイートで、
「『これは倒閣運動ではない』そうはっきり申し上げました。可能な限りの軌道修正を。見えるところばかりでなく、見えないところも含めた努力を。各地域、各候補の信頼の積み重ねを尊重する配慮を」
と訴えるが、党内で泉氏に対するプレッシャーは高まりそうだ。
「有志の会」メンバーにとっては、野党候補の一本化は死活問題だ。21年衆院選では、小沢氏は岩手3区で自民前職に敗れ、比例東北ブロックで復活当選した。小川氏の選挙区の香川1区では、自民前職の平井卓也・元デジタル相との一騎打ちになるとみられていたが、維新が新顔を擁立することが明らかになり、小川氏が維新に対して擁立取りやめを要求して波紋を広げた。維新は予定どおり候補を擁立し、小川氏は平井氏と維新の候補を破って小選挙区で議席を得ている。
岩手3区、香川1区ともに21年は共産党候補の擁立はなかったが、仮に方針が変われば次期衆院選ではさらに厳しい戦いを迫られることになる。
(J-CASTニュース編集部 工藤博司)