コロナ禍からの需要回復を見据えて、香港政府が大盤振る舞いだ。香港政府の空港管理機関にあたる香港空港管理局(AAHK)が2023年2月、全世界で香港への無料航空券50万枚を配るキャンペーンを打ち出した。配布は3月に東南アジアでスタートし、他の地域でも順次配布が進む。日本では6月下旬に受付が始まる。
ただ、懸念材料のひとつが、コロナ禍の20年に香港で施行された国家安全維持法(国安法)だ。現地では表現活動への圧力が強まっており、23年4月には日本での表現活動が原因だとみられる香港人学生の逮捕事案も明らかになった。香港人以外も処罰の対象になる可能性が指摘されており、本格的な需要回復にはこういった懸念も払拭する必要がありそうだ。
日本向けに航空3社が無料航空券3万8000枚配る
無料航空券はキャセイパシフィック航空、香港エクスプレス、香港航空の3航空会社を通じて申し込む仕組みで、3万8000枚が配られる。税金や空港利用料、燃油サーチャージは別途支払う必要がある。
キャセイパシフィック航空に割り当てられたのは1万2000枚。「キャセイ」会員を対象に6月26日正午から7月2日にかけて申し込みを受け付け、抽選の上7月12日に結果が発表される。香港エクスプレス航空は6月26日から先着順で1万4900枚配る。具体的な受付開始時刻はSNSで発表する、としている。香港航空は6月27日の朝9時から先着順。ウェブサイトに配布枚数の記載はないが、3社の合計から計算すると1万1100枚が割り当てられているとみられる。
航空券以外にも、120以上のレストラン、ショップで使える観光客向けのクーポン「香港グティーズ」100香港ドル(約1800円)相当を100万枚以上配る。
1~5月累計は「コロナ前」4割の水準
香港の観光需要は回復途上だ。香港政府観光局は6月15日、23年1月~5月に香港を訪れた人が累計で1000万人を超えたと発表した。「コロナ前」(17~19年平均)の約40%の水準だという。5月は283万人で、コロナ前の56%の水準だ。
23年4月の統計では、国別の内訳も明らかになっている。香港に来た人全体は289万2256人で、そのうち中国本土以外が58万3695人。そのうち日本からは1万9179人だ。一連のキャンペーンで、こういった需要を回復させたい考えだ。
ただ、国安法の存在が足かせになる可能性もある。日本に留学している香港人大学生が23年3月上旬、身分証更新のために香港に一時的に戻った際、国安法違反容疑で逮捕されたためだ。日本留学中に香港独立を支持するメッセージをSNSに投稿したことが問題視されたとみられている。この事案は、香港の外での行為が罪に問われる「域外適用」の初の事例とみられるとして4月に広く報じられた。香港人だけではなく外国人が香港の外で行った表現活動も罪に問われる可能性が指摘されている。こういった状況が観光客を萎縮させるおそれもある。
(J-CASTニュース編集部 工藤博司)