新人が上司に対して「なるほど」と返事することは失礼ではないか――。そんなツイートが議論を呼んでいる。
上司や取引先らの言葉に「なるほど」と返したらいけないのか。J-CASTニュースは、Office Tのビジネスマナー講師・金森たかこさんに見解を尋ねた。
立場が上の人には用いないのが無難
話題になったのは、2023年5月下旬の投稿。上司の立場だというユーザーが、新人に「なるほど」を使われるのが気になると訴えた内容だ。
このツイートは拡散され、議論になった。ツイッターでは、「なるほど」の是非をめぐって、
「別に気にならんけどな」
「納得したときいつも使ってる」
「私は言われたら気になるので、私からは使いません」
「激怒される可能性もあるので使わないのが賢明な言葉ですね」
といった声が出ており、意見が分かれている。
「なるほど」という相槌や返答を、新入社員が上司に使ったり、取引先やお客さんに使ったりするのは、失礼にあたるのか。ビジネスマナー講師の金森さんに6月6日、取材で尋ねると、
「基本的には、立場の上の人には用いないという考え方があるようです」
とした。
三省堂が発行する「新明解国語辞典(第8版)」で「なるほど」をひくと、運用として「相手の話を聞きながら、『確かにその通りだ』という気持ちを込めて相槌(アイヅチ)を打つ言葉としても用いられる。ただし、立場の上の人には用いない」と紹介されている。
金森さんは今回の議論について、「なるほど」という言葉自体を使って良い・悪いの話ではないとし、
「言葉というのは、その言葉を聞いた人がどう思うかが大事だと思います。『なるほど』は、上から目線の言葉に受け止められる可能性があるので、新人が上司に『なるほど』と言うと『ちゃんと聞いているのかな、わかっているのかな』というイメージを与えます。不快に思う人もいるので、使わない方が無難です」
と説明した。
「なるほど」を使ってしまったら...
金森さんによると、もし「なるほど」と口にしてしまった場合は、そこで終わらせずに「よくわかりました。ありがとうございます」などの言葉を続けるのであれば、失礼には聞こえないという。
金森さんは、自分に生意気なつもりがなくても、「なるほど」を使うと言葉のイメージから相手に誤解され、共感や納得の意味で受け取ってもらえないことがあるとも指摘。「失礼なイメージを持たれたらもったいないです」とし、次のように伝えた。
「なるほどを使ってしまったら言葉を続けて挽回し、普段から周りの先輩が使っている言葉を聞いて自分の中にストックしていくことが大切です」
「なるほどです」「なるほどですね」という言い方もあるが、金森さんは
「上から目線のイメージがある言葉に、丁寧な言葉を付けても余計失礼になります」
と指摘する。
「なるほど」の代わりに使うと良い言葉は
「なるほど」の代わりに失礼に受け取られない言葉を尋ねると、「なるほど」を使うシチュエーションにもよるが、
「おっしゃる通りですね」
「そうなんですね、初めて聞きました」
「それは知りませんでした」
「勉強になります」
など、相手に言われたことに対して自分の感想を素直に伝えると良いとした。
「なるほど」以外に注意すべき応答・相槌を聞くと、金森さんは「お上手ですね」を挙げた。
立場が下の者が上司をジャッジしているようで失礼に聞こえるとし、長くなりすぎないようにどこが上手だと思ったのか一言感想を伝えると良いと説明した。
また「お教えします」という言葉にも注意すべきだという。人によっては上から目線に捉えられる可能性があるため、「ご説明します」「私からお伝えします」と置き換えると良いとした。
金森さんは、失礼にあたることを言ってしまったと思ったら、そのまま終わらせずに、丁寧な言葉を続けて結ぶことが大切だとしている。