太平洋の島しょ国、パラオのウィップス大統領が2023年6月15日、東京・丸の内の日本外国特派員協会で記者会見し、海面上昇が続いている現状を念頭に「原子力の必要性を理解することはとても重要」だと述べた。
ウィップス氏は6月13日に東京電力福島第1原発を視察したばかり。現地での説明は透明性が高かったとして、処理水の海洋放出にも理解を示した。処理水の問題をめぐっては、中国や韓国で懸念の声が相次いでいる。ウィップス氏は、両国の原発から福島第1原発が予定しているよりも多くのトリチウムが排出されていることを念頭に「一貫した行動をとるべき」だとして、指摘は妥当ではないとの見方を示した。
「エネルギー問題を解決するためには、原子力発電を利用する必要がある」
ウィップス氏は原発視察について
「私たちは、日本の人々を信頼している。彼らは非常に透明性が高くオープンだ。現地(原発)に行って何が行われているかを視察できたのも、透明性を示す一例だ」
などと評価。
「他のリーダーたちも日本に来て、自分の目で確かめてほしい」
と話した。その上で、エネルギー源として原子力を引き続き活用することが必要だと訴えた。
「海面は今後も上昇し続けるだろう。そのため、原子力の必要性を理解することはとても重要なことだ。気候危機を解決するには、エネルギー問題を解決しなければならない。そして、エネルギー問題を解決するためには、原子力発電を利用する必要がある」
「日本政府はどうすれば近隣諸国の懸念をやわらげることができるか」
という記者の質問には、中韓の原発も多くのトリチウムを排出していることを念頭に
「私たちは、一貫した行動をとるべきだと思う」
と指摘し、日本だけを批判するのは妥当ではないとの見方を示した。その上で、改めて原発の継続的な運用を訴えた。
「彼ら(中韓の原発)が発表している(トリチウムの)レベルは安全なレベルだ。(福島の)アルプス処理水よりはるかに高い値であっても、安全なのだ。お互いに土を投げ合っていても仕方がない。私たちにとって原子力エネルギーは必要だ。私たちは、可能な限り安全な方法でそうする(原発で発電する)ように努めようではないか。私たちは、過去の事故の歴史や起こったことから学んできた。二度と同じことが起きないようにすべきだ」
パラオの主要産業は観光業で、コロナ禍で激減した需要の立て直しは急務だ。処理水の海洋放出が観光業に悪影響を与える可能性も指摘されている。ウィップス氏は次のように述べ、影響はきわめて限定的だとの見方を示した。
「(処理水は)日本の海岸、原発の目の前で放流されるのであって、船でパラオに運んでくるわけではない。このことを理解することが、おそらく最も重要なことだ。なぜなら、日本政府は自国民を守るためにあらゆる手段を講じているからだ。日本国民にとって十分であるならば、それ以外の国民にとっても十分なはずだ」
(J-CASTニュース編集部 工藤博司)