近畿日本鉄道の子ども向けお仕事体験が「ガチすぎる」と注目を集めている。一泊二日の体験ツアーで、駅長として様々な業務を体験できる。宿泊地は駅舎の仮眠室で、仮眠時間は4時間とされている。
取材に対し広報担当者は14日、ツイッターでの反響に戸惑いながら、子供たちに楽しんでもらうこと目的に企画したツアーだと説明する。
「就寝時刻24時・仮眠4時間とかガチすぎる」
注目を集めたのは、近鉄・吉野線の大和上市駅で実施予定のツアー「きんてつ 駅のお仕事体験2日間in 大和上市駅」だ。
体験は、大和上市駅を管轄する下市口駅長から「一日駅長」の任命を受けるところから始まる。初日は15時半に集合し、最終列車、最終回送列車の監視を終えた24時ごろに終業。駅舎の仮眠室で約4時間の仮眠をとった後、始業点検や始発回送列車、始発列車の監視などを体験する。
このほか駅係員の指導のもと、改札業務やホームでの列車監視、管内巡視、列車の切り離し(解放)作業の見学、特急列車の給水など様々な駅業務を体験できる。
1日1組限定で、7月29日から30日と、8月19日から20日に実施が予定されている。体験できるのは小学4年生から6年生の子どもで、保護者含め4人まで参加できる。大阪阿部野橋駅から参加する場合の料金は、大人1人1万円、体験する子供は3万円。
13日にツアーの実施が告知されると、ツイッターでは「就寝時刻24時・仮眠4時間とかガチすぎる」「社会の厳しさを学ばせる取り組み」などと驚く声が広がった。
「鉄道業に愛着をもってもらいたい」
取材に対し広報担当者は、ある新聞記事をきっかけに考案されたツアーだと説明する。
「その記事の記者さんが、子供のころ駅員さんに憧れていたと書かれていました。終電を見送り仮眠室で寝ている姿を想像し、それが楽しそうで『自分も駅員さんになりたい』と感じられたそうです。この記事を読んだ企画担当が『それなら弊社で実現できる』と考え、ツアーを計画しました」
せっかく来てもらうのならば楽しんでほしいと、様々な体験を盛り込んだ。列車の切り離し作業を間近で見学したり、特急車両の手洗い用の水などを給水したり、普段はできない体験ができる。駅舎での宿泊を伴う体験ツアーの実施は今回が初だ。
広報担当者は「大前提として、子どもたちに楽しんでもらうために企画したツアーです」と強調する。
「少人数での開催を予定しており、参加者が眠くなったり食事をとりたくなったりした場合は、臨機応変に対応します。全てのスケジュールを押し付けるつもりはなく、興味関心が薄い内容は飛ばしたり、逆にもっと見たい場所は長く見学したりすることも可能です。 駅舎での仮眠などの普段はできない体験を通じて、鉄道業に愛着をもってもらいたいと考えております」
広報担当者自身も、駅員や乗務員を務めたことがある。人々を安全に目的地に送り届けることには達成感を感じており、仕事に誇りを持っていると話す。
「今回の体験では、改札業務などでお客様にお声がけなどをしていただくことになると思います。人と人の触れ合いの中で、お客様に気持ちよくご利用いただけるという体験を通して、仕事に愛着を持ってもらえると思います」
実際に応募があった場合には、参加者たちの声を聞きながら、楽しい夏休みの思い出となるよう尽力すると話した。