故・ジャニー喜多川氏の性加害疑惑を調査する「外部専門家による再発防止特別チーム」が2023年6月12日に記者会見を開いた。
会見にはメンバーの前検事総長で弁護士の林真琴氏と精神科医の飛鳥井望氏が出席。チームは2人加え、臨床心理の研究者の3人で構成される。会見にジャニーズ事務所社長の藤島ジュリー氏は出席しなかった。
リスクマネジメントの専門家の見解は
会見で林氏は、過去の性加害の存在を前提として、事務所の対応にどのような問題があったかを検証すると説明。その一方で、現役のジャニーズタレントを含め、所属経験のある人への聞き取りについては心理的負担などが懸念されるとして、網羅的な調査は行わないとの方針を示した。
このほか、チームは5月29日に会合を開いていたと説明したが、具体的な内容については明かさなかった。果たして機能するのか――。J-CASTニュースは企業の危機管理に詳しいエイレックス(東京都港区)の江良俊郎社長に意見を聞いた。
まず、リスクマネジメントの観点から昨日の会見の成否については、
「事務所の関係者が登壇しない第三者の2名だけだったとはいえ、会見を開き記者の質問に答えた点は評価できる。ただ、本来は社長も登壇し、『このチームには何があったのかを徹底的に調査し、背景や原因を明らかにして再発防止を提言してもらいたい』と言ってほしかった」
と指摘した上で、事務所がどのような内容の調査を依頼したのかについての説明が必要だったと語った。
その一方で、事務所側の心中を推測しつつ、社会を納得させることが出来なければ信頼回復は難しいとも指摘する。
「ジャニーズ事務所としても成果はあったといえよう。特に第三者委員会の機能を有していると答えたことにより、『事務所としてはしっかり調査するんだな』というメッセージを出せたことは、事務所として『うまくいった』と考えているかもしれない。しかし、問題はこの後、しっかり調査し、『何が起きたのか』『社長は本当に知らなかったのか』などを事務所の風土や背景など含めて納得できる形で報告されなければ、信頼回復にはならないだろう」
「第三者委員会ということであれば、通常は多くの弁護士らが参加する」
そもそも第三者委たりうるかについても聞いた。江良氏は、
「必ずしも日弁連(日本弁護士連合会)の指針に準拠しなければ『第三者委員会』として認められないということではないが、大事な点は『独立性』だ。独立性を確保して、調査・報告してもらうことを期待したい」
と説明。同時に、
「そもそも、第三者委員会ということであれば、通常は多くの弁護士らが参加するが、今回、3人だけのようなので、これでは『第三者委員会の機能』は果たせないのではないか、という懸念がある」
と指摘。仮に調査が不十分な結果に終わった場合、「このチームだけを責めるのは筋が違うだろう」との考えを示した。
(J-CASTニュース編集部 坂下朋永)