飼育舎とみられる場所で男性が乳牛を蹴ったり殴ったりするような様子が映った動画が、TikTokに投稿され、島根県警が動物愛護法違反(動物虐待)の疑いで捜査を始めた。
県の畜産課は、県内の牧場を調査した結果、従業員が蹴るなどの行為を認めて謝罪したと取材に明らかにした。一体なぜこんな行為が行われたのだろうか。
牧場従業員の男性は、「非常に申し訳ない」と謝罪
動画は少なくとも2つあり、県では、いずれも同一人物の行為だとみている。
その1つを見ると、帽子を被り白い長靴を履いた作業着の男性が、牛の鼻などに着けたロープを引っ張りながら、まず右足で牛の顔を蹴った。さらに、ロープを飼育舎の柱に引っかけて、牛の顔を引くと、首を右足で蹴り上げた。蹴りは、4回も繰り返している。
もう1つの動画では、男性が牛のロープを引っ張りながら、牛のアゴを右手で叩く。また、顔を指でいじるような動きをして、牛が暴れていた。すると、男性は、牛の首に右手でパンチを浴びせる。今度は、右足で首を蹴り上げ、さらに顔も蹴っていた。
この2つの動画は、酷すぎるとして、ツイッターで2023年6月10日に取り上げられた。その際に、島根県内の牧場だと名指しされた。この投稿は、1000件以上リツイートされており、動画が転載されて拡散している。
この騒ぎを受けたためか、動画を投稿したTikTokのアカウントは、12日までに削除された。
島根県の畜産課は13日、J-CASTニュースの取材に対し、11日に動画投稿を把握して、12日に事実確認するための調査を行ったところ、名指しされた牧場の従業員が動画の行為を認めて謝罪したことを明らかにした。
「動画を見る限りでは、ロープを強く引き、蹴ったり叩いたり、牛の目を押さえたりしていました。なぜこのような行為をしたのかは、従業員からはっきりした説明はありませんでしたが、『非常に申し訳ない、申し訳ない』と謝罪したと聞いています」
島根県「明らかな暴力行為で、刑事罰の対象」
動画は、いつ撮られたものかはっきりしていないというが、この従業員がスマホなどを置いて、自撮りしたと聞いているとした。そのうえで、自分でTikTokに投稿したと明かしたという。なぜ投稿したのかについては、まだ聞いていないとしている。
「このように牛を痛めますと、健康を損ない、生産性を落としてしまいます。通常ではありえない行為だと思います。なぜこのような行為をしたのか、理解に苦しみます。過去には、こうした行為は、県内では聞いたことがありません」
島根県警の所轄署が通報を受けて、牧場を立ち入り調査したことも明らかにした。この従業員は、牧場から出勤停止処分を受けたとし、自宅待機している模様だ。
動物愛護を担当する島根県の薬事衛生課は、取材に対し、牛を蹴るなどした動画が炎上して拡散していることを把握しているとしたうえで、次のように答えた。
「動画を見ますと、牛の頭をロープでつないで蹴っています。明らかな暴力行為で、刑事罰の対象になると思います。保健所が牧場とコンタクトするルートを確保して事実確認しており、警察に情報提供したいと考えています」
動物愛護法の第44条では、牛などの愛護動物について、「みだりに殺し、又は傷つけた者は、五年以下の懲役又は五百万円以下の罰金に処する」と規定されている。
島根県警の所轄署は、取材に対し、次のように話した。
「動画が出回っていることは知っており、情報提供も受けています。この件については、動物愛護法違反の疑いで捜査中です。事情聴取したかなどについては、コメントは差し控えさせていただきます」
J-CASTニュースでは、動画の行為があったとされる牧場に対して、12日からメールで取材を申し込んでいる。
(J-CASTニュース編集部 野口博之)