市街地に近く、騒音対策のために原則として22時以降の着陸を認めない福岡空港の「門限」をめぐる問題に、若干の進展があった。
2023年2月19日には、羽田発福岡行きのJL331便が22時頃に福岡上空に到達したものの、混雑で門限に間に合わず着陸が認められなかった事案が発生。同じ福岡県内には24時間運用の北九州空港もあるが、受け入れ体制が整っていなかったため、関西国際空港で給油の上、羽田空港に深夜2時50分に戻っていた。
その後、福岡空港の代替着陸(ダイバート)先として北九州空港を活用する検討が進んでいた。その上での初のダイバート事例が6月11日夜に出た。乗客はJALが用意したバスで福岡市に移動。羽田に戻るのではなく、その日の深夜に目的地にたどり着けた、という点では1歩前進だ。JAL広報部ではフライトが遅れたことを陳謝する一方で、行政や地元企業の協力で「お客様をスムーズに博多近辺へご案内することができた」としている
北九州空港から福岡市に乗客を運ぶバスを手配
福岡空港では、悪天候で出発が遅れる場合は、事前に申請すれば22時以降も着陸を認めることがあったが、整備や荷物の積み込みなど航空会社の事情が原因の場合は認めてこなかった。
2月のJL331便の事案を受けて北九州市や福岡県は北九州空港の活用について検討する会議を設置。受け入れ体勢の検討が進み、ダイバートを見据えて北九州空港から福岡市に乗客を運ぶバスを手配することも多かった。4月以降に手配した回数は9回あったが、大半が実際に乗客を乗せることなくキャンセルされた。10回目にして初めて、北九州空港にダイバートしてきた乗客を運ぶことになった。
今回の事案が起きたのもJL331便。エアバスA350型機の「JA11XJ」で6月11日の18時45分に羽田空港を出発する予定だった。乗客354人(うち幼児1人)を乗せて19時8分には羽田空港のゲートを出発。ところが、第2エンジンを始動する「スターター」と呼ばれる装置に不具合が発生し、始動時に火花が散るなどした。そのため、離陸前に引き返し、19時30分にゲートに戻った。