山形県米沢市の老舗旅館「湯滝の宿 西屋」の女将が2023年6月6日、客に宿泊時のルール遵守を促すため、チェックイン時に同意のサインを求める対策を始めたことをツイッターで明かした。
この旅館は2022年12月、全面禁煙の客室で喫煙した迷惑客がいたことをツイートで告発し、注目を集めていた。
「凍える空気の中掃除してくれたスタッフに心の中で詫びなされ」
「湯滝の宿 西屋」は、約700年前に開湯した白布温泉に唯一残る茅葺母屋の旅館だ。本館は、江戸中期から昭和時代にかけて建てられた築約百年の歴史ある建物だという。
公式サイトによると、旅館内は全館禁煙で電子タバコも不可だという。「建物の構造上、臭いが霧散しにくく、他のお客様へのご迷惑ともなります」とし、「どうしてもご滞在中の喫煙が我慢できそうにないという方は、喫煙可能な設備のあるお宿さんへのご宿泊を改めてご検討されるようお願い申し上げます」と呼びかけている。
今回の対策のきっかけとなったのは、22年12月16日の女将のツイートだ。敷地内で喫煙する客がいたとして、怒りを露わにする内容だった。
「あれほど『館内敷地内完全禁煙』とHPにも予約ページにも客室にも掲示しているというのに、部屋で散々タバコを吸って臭いだけ残して帰っていかれたお客様。宿を何だと思ってる?分からいでか。その部屋は消臭作業の為数日は使えない。凍える空気の中掃除してくれたスタッフに心の中で詫びなされ!!」
あわせて、部屋に貼られた「館内・敷地内禁煙 NO SMOKING 電子タバコもご遠慮ください」と書かれた注意書きの写真も公開していた。
投稿が波紋を呼ぶと、思わぬ展開があった。
ツイートから2日後、女将がツイッターで、「あれから後日談。喫煙されたお客様からまさかの口コミ(酷評)が」と報告。実際に寄せられたという口コミのスクリーンショットを添え、「事を荒立てたくありませんでしたが、自身の行いを棚に上げたあまりの暴挙にとうとう堪忍袋の緒が切れました」と怒りをあらわにしていた。反論のコメントも投稿したという。
「どうやったら宿を守れるか、お客様に安心してお越し頂けるか」
騒動から約半年後の6月4日、女将は発端となったツイートを引用し、「一生経験することはないだろうと思っていた炎上にまさかの遭遇で大変戸惑いもしましたが、この出来事が抱える問題背景から逃げずに向き合うと誓いました。そんな自分を、せめて今は褒めてあげたい...」と振り返った。
6日には、ユーザーから寄せられた「チェックインの時に誓約書のようなものを提示・提出させてはどうか」というツイートに反応。アドバイスを受け、迷惑行為への新たな対策を取り入れたことを明かした。5月から実施しているという。
「良いコメントを頂きました。当館は、この度の一件を機に宿泊約款の改定をした上で、チェックイン時に約款・利用規則への同意を求めるサインを頂くようにしました。有難いことにお客様もご理解下さっています」
続く投稿では、喫煙などの迷惑行為で部屋の使用が出来なくなった場合、その分の実費を請求する約款に改定した、などと報告している。その後のツイートでは、温泉を守る自身の立場について
「どうやったら宿を守れるか、お客様に安心してお越し頂けるか。もう何年も前から、正解もゴールもない自問自答が延々続いています。一人ではないのが救い。良い方向に進んでいる。それだけは信じたい」
との胸中も綴っていた。