元参議院議員の「ガーシー」こと東谷義和容疑者(51)が2023年6月4日、滞在先のドバイから日本に帰国し、著名人ら3人に対する常習的な脅迫などの疑いで警視庁に逮捕された。
逮捕報道を受け、ツイッターでは「テレビが逮捕された犯罪者をいつまでもガーシーとかふざけた名前で呼ぶなよ」といった、名前の呼び方に対する疑問の声が上がっている。J-CASTニュースは同容疑者の報道での呼び方について識者に見解を聞いた。
「容疑者のことをニックネームで呼ぶなや」
逮捕翌日となる5日、テレビでは東谷容疑者の逮捕を伝える報道が続いている。同日朝に放送された「おはよう日本」(NHK総合)、「DayDay.」(日本テレビ)、「羽鳥慎一モーニングショー」(テレビ朝日系)、「THE TIME,」(TBS系)、「めざまし8」(フジテレビ系)での呼称を編集部で調べた結果、
・ニュースのキャッチの部分では「ガーシー元参議院議員」(「おはよう日本」)もしくは「ガーシー容疑者」(同番組以外)
・逮捕VTRの冒頭では「ガーシー、本名・東谷義和容疑者」(「THE TIME,」と「おはよう日本」)もしくは「ガーシーこと東谷義和容疑者」(同2番組以外)
・本名を出した後は再び「元議員」(「おはよう日本」)もしくは「ガーシー容疑者」(同番組以外)
というもので、局は違えど一定の規則性がうかがえる。特に、VTRの冒頭以外は民放で「ガーシー容疑者」が連呼されており、各局で報じていただけに多くの人の目に入ったためか、ツイッターでは、
「メディアももういい加減に『ガーシー』なんて呼ぶなよ。普通に本名で呼べよ」
「東谷容疑者と言えよ 何がガーシーだよ あだ名で、容疑者の名前呼ぶな」
「テレビでガーシー容疑者とか言いようけど、容疑者のことをニックネームで呼ぶなや」
「いい加減ガーシーと呼ぶな。東谷義和容疑者で統一しろ!」
などと疑問や要望の声が続々と上がっている。
なぜ報道番組で「東谷容疑者」ではなく「ガーシー容疑者」と呼ばれるのか。編集部は放送コラムニストの高堀冬彦氏に意見を求めた。
「『ガーシー』で国会活動をすることを参院が認めたことが大きいです」
高堀氏は、容疑者に本名とは別に世間一般で使われている名前、すなわち「通名」がある場合、報道でどちらを使うかの判断をするにあたっての法律や公式なガイドラインはないと説明。あくまでマスコミ各社の自主判断であるとしつつ、今回のガーシー容疑者についての各メディアの報道状況を分析した。
「なぜ、東谷義和容疑者が『ガーシー容疑者』と呼ばれるかというと、これは2022年7月に行われた参議院議員選挙後に彼が、『ガーシー』で国会活動をすることを参院が認めたことが大きいです。その時点でガーシーは『通名』になりました。通名とは、実社会において、本名と同様に、あるいは本名以上に通用している呼び方のことです。逮捕時にはこれが使われるのが一般的です。そうしないと、誰が逮捕されたのか分かりにくいという判断です」
また、高堀氏は芸能人が逮捕された場合にも言及した。
「芸能人が使っている芸名も『通名』です。芸能人の過去の逮捕者を思い出してください。みんな芸名で報じられます。通名だからです。本名と併せて報じるところもありますが、これも自主判断です」
これらを説明した上、高堀氏は「ガーシー容疑者」という呼び方に違和感を覚える視聴者が多い理由を考察した。
「彼は芸能人ではないし、議員活動歴もなく、広く有名人だったわけではないからでしょう。彼のYouTubeを見たことのない人は少なくないはずです。それなのに通名だからといって報道に使うと、疑問に感じるのだと思います」
最後に、高堀氏は「テレビ報道は世間の声をかなり気にしますから」としつつ、ツイッターをはじめとしてインターネット上に違和感の声が多数挙がり続ける事態となった場合は、「ガーシー」という呼び方が使われなくなる可能性はあるとも語った。
(J-CASTニュース編集部 坂下朋永)