推しへの「投げ銭」で生活苦に...国民生活センターへの相談増加 依存の背景&自衛策は?専門家に聞く

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「1対1になれる価値はものすごく高い」

   そもそも「推し」や「推し活」とは一体何か。久保氏は「愛好する対象に、能動的に働きかける状態」を「推し活」だとし、推される対象が「推し」になると定義する。現在の推し活は、インターネットやSNSを介して「他者と繋がる」ことができることも特徴だと述べる。

   なぜ「推し活」には依存症的なメカニズムがあるのか。推し活は心理学的に大きな快楽が得られる行為だと久保氏は説明する。「自分が働きかけた見返りとして快楽が得られると、それを継続したくなるのが人間です」とし、自分の現実世界とは別の領域(非日常)にいる対象から得られる快楽が推し活にあると話す。

   久保氏によれば、通常の推し活は、自分の現実世界の中でコストと快楽のバランスが保たれている。しかし、「不安だけど続けてしまう」「辞めたくても辞められない」という状態はバランスを崩しており、非日常に一瞬逃避するも、また不安を感じる現実世界に戻るという悪循環になっているという。

   推し活における「投げ銭」の価値は一体何か。久保氏は、ブランド品に価値を見出す人がいることと同じ構造で、価値観は個人ごとに振れ幅があるとしつつも、「ファンコミュニティの中で自分をアピールできる価値はものすごく高いのかなと思います」とも述べた。

   もちろん推し活にはメリットもある。久保氏は(1)現実の日常生活を生きる活力が得られる(2)自分の世界が広がる(3)利他による幸福感――の3点を挙げ、これらについて説明した。

   自分が生きる現実世界と別のところにいる「推し」は「非日常」であり、自分の日常を生きていくための活力が得られる。また、自分の世界の外にいる「推し」を介することで、自分の世界を拡張することができる。例えば、自己紹介の時に「自分の推しは何々です」と説明し、自分の世界の外にいる「推し」を介して自己表現をすることなどだ。さらに「推し」のために自分の資源(時間、お金、労力など)を分け与えることで幸福感を得られるという。

   一方、推し活のデメリットはメリットと表裏一体にあると久保氏は話す。(1)現実と非日常のバランスの逆転(2)自分と推しの主従関係の逆転(3)依存性――という3点を挙げた。

   「推し」という非日常の存在によって自分の日常を生きる活力が得られる一方で、それが逆転してしまうこともある。また、自分から「推し」にお金を出す状態から、お金を出さざるを得ない状態に逆転することもある。そして、「推し」がないと幸福になれないという依存性もあると説明する。

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