各県ごとのニュースが減ることの懸念も
この日の会合では、各県ごとのきめ細かいニュースが減ることへの懸念も出た。議事要旨によると、山本龍彦・慶應大大学院教授が次のように指摘している。
「知る権利というものが各県、各地域の住民の方にあるとすると、X、Y、Zで同一放送するということになると、それまで各県でそれぞれ流されていた情報の割合というのが、どうしても減るのかなと思うわけ。減らないという考え方もあるのかもしれませんけれども。それを各県の住民がどういうふうに受け止めるのかどうか」
これに対して、テレビ朝日HD取締役(当時)の藤ノ木正哉氏は、
「ニュースなどの編成が特定の県のニュースに偏らないようバランスを取ることなど工夫が必要」
「放送局の経営状況が厳しくなると、番組制作費などの経費節減に踏み切らざるを得ず、それによって取材力や番組制作力が低下するという縮小再生産に陥ってしまいかねないが、放送番組の同一化によりまして経営状況に余裕が生まれれば、コンテンツ制作に新たな費用を投下することも可能になる」
などとして、経営を改善することの意義を強調している。
これを受ける形で、22年8月の報告書の「今後の方向性」の項目では、放送対象の地域について「柔軟化を図るべき」だとして、具体的方策として
「放送対象地域自体は現行から変更せず、希望する放送事業者において、複数の放送対象地域における放送番組の同一化が可能となる制度を設けるべきである」
と指摘している。各県ごとの報道が減りかねない点を念頭に、
「地域情報の発信を確保するための仕組を併せて措置すべきである」
という文言も盛り込まれている。
(J-CASTニュース編集部 工藤博司)