人の目に傘が当たって視力を奪う前にやめてください――。傘を地面と水平になるように持つことの危険性を訴える投稿が話題になっている。
投稿したのは、岐阜県立多治見病院で眼科医長をしているツイッターユーザー「眼科医ヨシユキ」さん。どのような危険があるのか。詳しい話を聞いた。
「今日からやめてください、お願い」
眼科医ヨシユキさんは、医師の立場からYouTubeチャンネルを運営し、目のセルフケアや医療情報を発信している。チャンネル登録者数は約21万人。眼科医ヨシユキの名義で著書も出している。
話題となったヨシユキさんのツイートは、2023年5月29日に投稿された。腕を振ることで傘が真横になっている人のイラストを掲載しつつ、そうした人を街中で見かけるとし
「ちょうど子供の目の高さです。階段なら大人の目にも当たるでしょう」
と危険性を訴える内容だ。
続けて、「このまま梅雨入りしてしまうなら、あなたの周囲の人は連日この危険に晒されて歩くことになります。今日からやめてください、お願い」と注意を呼び掛けた。
投稿は31日昼までに170万回以上表示されるなど注目を集め、リプライ欄には共感の声が相次いだ。
「エスカレーターの段差で丁度私の目の高さで傘が当たりそうになった事がある」
「これ、本当にやめてほしい!私は膝にあたり痛かった」
「これ前階段登ってる人がやっててまじで失明するとこだった...超怖かった...」
「ビジネスバッグの上に傘横置きにしてブンブン歩くのもマジでやめてほしい」
実際、東京都生活文化局消費生活部の13年6月の調査では、都内在住の15歳以上の男女3000人のうち、42%にあたる1260人が、たたんだ傘でのヒヤリハットや危害経験があると回答。そのうちの約6割が「『駅の階段やエスカレーターで前の人が傘を水平に持つ(振る)』に近い状況」でヒヤリハットを経験している、とされていた。
「失明状態になってしまった方もいます」
J-CASTニュースは30日、投稿したヨシユキさんに詳しい話を聞いた。
なぜこのタイミングで傘が地面と水平になるような持ち方に注意喚起をしたのか尋ねると、「街中ではいまだにこの持ち方をする人を散見します」とし、
「周囲に健康被害を与えうる危険な持ち方です。梅雨入りもしたことで傘を持つ機会が増えるので、このタイミングで注意喚起をしようと思いました」
と答えた。
傘の先が目に入るなどした場合、どのようなリスクが考えられるのだろうか。ヨシユキさんに聞くと、
「目に少し触れるだけで角膜や結膜などに障害を与える他、強い衝撃だった場合は目の内部構造である水晶体や網膜などの障害を起こすこともあります」
とし、「中には眼球破裂を起こし失明状態になってしまった方もいます」と説明した。
自身は傘で目を刺された患者を診察したことはないというが、「街を歩いている際に実際に自分の顔に当たりそうになったこともありますし、子供が当たりそうになっていたのを目撃したことはあります」とコメント。
眼科医ヨシユキさんの思う傘の正しい持ち方を尋ねると
「傘のハンドル部分を持ち、傘の先は地面になるべく垂直に向けて持つように心がけましょう」
とし
「このように持っていたとしても、いざ歩き始めるとブンブン振ってしまう人もいるので注意してください」
と伝えた。