ウクライナは戦争をしている国には見えない――。現地のマクドナルドの店内動画を引用した、こんな日本語のツイートが拡散している。若年客を中心に賑わっているようにみえ、まるで平時のような光景が映されていた。
しかし、撮影した元ウクライナ高官は間違ったプロパガンダに反論するため公開したといい、寄せられた疑問を否定した。
「若者がいかに多いかに注目してください」
発端は、元ウクライナ経済発展商務・農業相で、キーウ経済大学学長のチモフィイ・ミロワノフ氏の2023年5月27日のツイートだった。
同日夜に、ウクライナの首都キーウのマクドナルドの様子を撮影し、「若者がいかに多いかに注目してください」と呼びかけた。
20秒ほどの動画には、広い店内で客がにぎわう様子が確認できる。多くは若年層の男女とみられる。
30日夕時点で約800万回再生されており、日本でも注目を集めた。「戦争をしている国には見えない」という日本語の投稿は2500以上リツイートされ、議論を呼んでいる。もっとも、「どこでも戦闘状態なわけないでしょ」「有事であっても経済活動は行われる」と反論が数多く寄せられている。
ミロワノフ氏は続く投稿で、「戦争を経験していない人にとって、ミサイルが外に着弾しても普通の生活が続くということは理解しがたいことです。しかし、そうです。それで大丈夫です」とSNSの議論に理解を示し、「世界がウクライナを支援することで、この普通の生活がウクライナ、そして重要なヨーロッパで継続できるようになったのです」と説明する。
動画は2つのプロパガンダ▽国民は軍に引きずり込まれるため街を歩くのを恐れている▽ウクライナに若者はおらず全員去ってしまった――を否定するために投稿したという。
「戦時中にしては雰囲気が良すぎる」との声も...
キーウも、戦場の一つになっている。
英BBCや米CNNによれば、最大規模のドローン攻撃が28日にあり、死者も出た。オレーナ・ゼレンシカ大統領夫人は、子どもたちが爆発音を聞いて避難所に駆け込む姿を収めた動画をSNSに投稿している。
ミロワノフ氏はこの一件を受け、「ここは戦場なのです。マクドナルドや他の企業がそのような印象を与えないとしてもです」と改めて訴え、「戦闘地域には見えない」「戦闘地域はそもそも存在しない」といった指摘を否定した。
店内動画も、写っている人物の多くは女性で、男性の中には軍服を着ていた人もいたという。
「適齢男性は前線に出るべき。そうでなければ存亡をかけた戦いには見えない」との意見もあったといい、こちらも「もし男性全員を前線に送ったら、経済は崩壊してしまいます」と反論した。研究開発や外交、サイバー戦争など、間接的に戦争に参加している人も多くいるとする。
「戦時中にしては雰囲気が良すぎる」との主張には、「これは愚かなことです。人々の顔をよく見てください。多くは厳しいものです。彼らは気楽ではありません。人々は正常を求めており、マクドナルドはそれを提供しています」と述べた。
In case you are wondering - this is McDonalds in Kyiv, today, Friday night. Note how many young people are there. pic.twitter.com/mh1VIO7QId
— Tymofiy Mylovanov (@Mylovanov) May 26, 2023