ライトノベルの文学賞「ネット小説大賞」の運営は2023年5月29日、受賞作「病的な恋のロンド」の取り扱いに関する発表が「誤解を招く表現」だったと謝罪した。
「諸般の事情により受賞取り消しとなりました」
「ネット小説大賞」は、小説投稿サイト「小説家になろう」と連携し、クラウドゲート(東京都千代田区)が運営している。第10回には1万3116作品の応募があり、約50作品が受賞した。
コンテスト公式ツイッターで26日、コミカライズ企画が進行中だった受賞作について次のように発表した。
「第10回コンテストでコミックシナリオ賞を受賞となった『病的な恋のロンド』は諸般の事情により受賞取り消しとなりました。 当コンテストでは作品をお預かりする立場として、これまで以上に応募者様と協賛企業様とで商業化における十分な話し合いが行えるよう対応を検討していきたいと思います」
同作をめぐっては作者の糸さんが24日、受賞を辞退したと「小説家になろう」上で発表していた。コミカライズ企画を進めていた新潮社の担当から、編集部内の事情で続けることが困難になったと連絡があり、企画が白紙になったとしている。
「作品として、たとえば他のコンテストに応募するなどの運用がほぼできなくなってしまうので、わたしのほうから新潮社のご担当者さまに相談し、ネット小説大賞運営さまにも確認のうえで、コミックシナリオ賞については受賞取り消しとさせていただきました」
糸さんの発表を目にしていたファンからは、「ネット小説大賞」運営の発表は不十分だとする声が上がった。
「この文章だと作者が悪いみたいに読めてしまう」
「どういう経緯でこうなったのかご説明いただけますでしょうか?」
ツイッター上の運営の発表には、第三者が背景情報を書き加える機能により、糸さんの発表のリンクなどが書かれた。
「正確な情報をお伝えせずに誤解を招く表現を発信した」
「ネット小説大賞」運営は29日、ツイッターに「SNS上における表現に関するお詫び」と題した書面を掲載した。コミックシナリオ賞受賞取り消しの発表について、「正確な情報をお伝えせずに誤解を招く表現を発信した」として、作者や新潮社らに謝罪した。
「当該作品に関しましては、受賞後、出版社様のご事情によりコミカライズ化の継続が困難となり、作者様と出版社様との協議の結果、商業化が見送られることとなりました。その後、当該作品において受賞歴がある場合、今後の作品の運用や商業化において支障が出てしまうことを懸念され、出版社の合意の上、作者様より受賞辞退の申し入れがございましたため、運営として対応させていただきました」
商業化の見送りや受賞辞退について、作品の規約違反などによるものではないと説明する。
当初の発表については、作者や出版社と相談のうえで削除したという。発表では、情報発信を優先し結果のみを公表したことや、「取り消し」という表現を用いたとして、謝罪した。
この度は第10回受賞作品に関する投稿について、
— ネット小説大賞|公式【開催中】 (@NovelNarou) May 29, 2023
作者様、出版社様をはじめ
多くの皆様にご迷惑をおかけしてしまい
大変申し訳ございませんでした。
作者様、出版社様にも内容に
ご承諾いただいたうえで、
謝罪文を掲載させていただきます。 pic.twitter.com/kpCH0rNO2L