「本当に度を超している」公明を激怒させた自民側の一言 自公亀裂で広がる疑心暗鬼、ちらつく「2つの影」

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   20年以上にわたる自民・公明の連立が曲がり角を迎えている。衆院小選挙区の「10増10減」をめぐる選挙区調整で、公明は「東京における自公の信頼関係は地に落ちた」として、東京で両党の協力関係を解消し、次期衆院選で東京の自民候補者に推薦を出さないことを通告した。公明は、協力解消は東京限定で「連立に影響を及ぼすつもりはない」とするが、「やはりこれは、全国にも波及すると思う。いろいろな形で」(立憲民主党・泉健太代表)といった見方をする人は多い。

   今回の事態をめぐっては、首都圏での勢力拡大を図る日本維新の会や、東京都の小池百合子知事の影を指摘する声もあり、永田町では疑心暗鬼が広がっている。

  • 公明党の「通告」に永田町では疑心暗鬼が広がっている
    公明党の「通告」に永田町では疑心暗鬼が広がっている
  • 公明党の「通告」に永田町では疑心暗鬼が広がっている

西田実仁選対委員長「この問題の本質は、やっぱり29区なんですよ」

   公明党の石井啓一幹事長の「地に落ちた」発言が出たのは、2023年5月25日に行った自民党の茂木敏充幹事長との会談直後だ。「10増10減」で東京の小選挙区は25から30に5つ増え、そのうち公明は28区(練馬区東部)と29区(荒川区・足立区西部)での擁立を求めてきた。29区は公明の現職擁立が決まっているが、自民は28区での擁立を拒否。これに反発する形での「地に落ちた」発言で、「公明党の最終的な方針」として、以下の5点を通告した。

(1)東京の2議席目の小選挙区について自民党とこれ以上交渉はしない。東京28区は公明党として候補者は擁立をしない。
(2)東京29区について自民党からの推薦は求めずに公明党単独で戦う。
(3)東京のそれ以外の選挙区については公明党は自民党候補を推薦しない。
(4)今後の都議選や区議長選などの各級選挙についても、東京における両党の選挙協力は行わない。
(5)東京都議会における自公の協力関係も解消する。

   石井氏の直後に発言した西田実仁選対委員長によると「この問題の本質は、やっぱり29区なんですよ」。新設される29区のエリアは、区割り変更前の12~14区の一部にあたる。12区は公明の地盤だが、13、14区は自民の地盤だ。公明からの擁立には13、14区から反発があるといい、西田氏は次のように暴露した。

「(自民の)党本部が仮に(公明が擁立した人を)推薦しても、地元で出たいという人が無所属でいるから、それを自民党の地元としては応援するということを、重職にあられる都連の幹事長が直接(公明の立候補予定者)本人に申し渡している。これは本当に度を超している」

   29区をめぐって自公の信頼関係が揺らぐ中での28区問題だとも言えそうだ。これに先立つ5月23日の会談では、自民は28区で公明候補の擁立を認めない代わりに、自民の支部長が決まっていない12区(北区、板橋区の一部)か15区(江東区)での擁立を提案。この対応がさらに公明側の態度を硬化させた、との見方もある。

   先ほどの29区の経緯のように、そもそも12区は公明の地盤で、21年の衆院選では公明が公認した岡本三成氏が当選。10増10減にともなって、岡本氏は29区に移ることを選択した。こういった経緯があるなかで自民は公明に対して12区に「出戻る」ことを提案したわけで、公明側の反発は容易に予想される。

   15区はさらに事情が複雑だ。21年の衆院選では、カジノを含む統合型リゾート施設(IR)事業を巡る汚職事件で、秋元司氏=一審で有罪判決、控訴中=が自民を離党し、出馬を断念。自民は今村洋史氏と柿沢未途氏の無所属2人に推薦を出し、分裂選挙を勝ち抜いた柿沢氏を追加公認した。東京都連は今村氏の公認を求めたが、遠藤利明選対委員長(当時)が認めなかったという経緯がある。このことが禍根を残し、柿沢氏は現職議員でありながら都連に所属できず、支部長にも選任されていない。このまま解散総選挙に突入すれば、21年同様に無所属で出馬する可能性もある。柿沢氏には、外相を務めた父・弘治氏以来の地盤もある。そういった中で公明に擁立を打診することは、負け戦を勧めることにもなりかねない。

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