「甘く見ていた」ワンオペ育児のつらさ糧に 保育園でレトルト総菜販売、実現させた父親の熱意

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保育園で総菜?試行錯誤の上でサービス展開

   ハウス食品グループは2020年、公募型の新規事業創出プログラム「GRIT」を開催しグループ内から新規事業のアイデアを募った。石井さんは共働き世帯の当事者として、また自身の子どもたちが大きくなった時に同じ苦しみを味わってほしくないという思いから、エントリーした。子育て世代の夕食の準備の負担を軽減するために、保育園で総菜を持ち帰ることができるサービスを実施したいと考えた。

「保育園のお迎えの時、園の給食を夕飯用に持ち帰らせてほしいと考えていました。しかし現実的には食品衛生などの観点から難しい。ならば私たち食品メーカーが代行してできないか」

   審査を通過した石井さんは、21年春から新規事業開発部に移り「タスミィ」に注力し始めた。自ら保育園に営業電話をかけ、問い合わせると「保育園から総菜を持ち帰るという話は聞いたことがない」と言われるなど、イメージを共有するのに苦労したという。しかし石井さんは自らの経験をもとに保育園での提供にこだわった。

「最適な動線の中でサービスを提供したいと考えたとき、ほとんど毎日通るのが保育園です。スーパーで提供することは考えていませんでした。
私自身はワンオペ育児中、ほとんど時間が無く、買い物は週に1度しか行けませんでした。子どもを連れて行くことの億劫さもありました。子どもはつい寄り道したくなってしまったり、お菓子などが欲しくなったりしてしまいますし、目を離せません。時間も体力もお金も消耗する買い物はハードでした」

   テスト販売では、総菜を詰めたタッパーやお弁当の提供も実施した。採用されたのは、好きな時に好きな分だけ食べることができるレトルトパウチでの販売だった。

「子育て世代は、計画通りの生活を送りづらいです。子どもの体調不良などで、突然生活のリズムが狂う。お弁当などは事前に注文しなければならず、予定外のことに対応できません。
お客様が必要な時に、必要な分だけ購入できるよう、自動販売機でのレトルト食品の提供にたどり着きました」
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