日本テレビ系の報道番組「news zero」が行った街頭インタビューで、自らの絵を画像生成AIに模倣させたものと比較されて深く傷ついたと、アメリカのアーティストがツイッターで抗議声明を出した。
インタビューの放送では、AI模倣作の方が好きだとする声だけを伝えていた。これに対し、日テレの広報部は、「生成AIの現状を放送したもの」だとして、アーティストには放送後に企画趣旨などを説明したと取材に答えた。
街頭インタビューで、AI模倣作の方が好きだとする声だけ紹介
2023年5月16日深夜放送のnews zeroは、画像生成AIの問題を特集した。
アメリカでは、AIとその開発会社などから著作権侵害を受けたとして、アーティストらが集団訴訟を起こしている。
そのうちの1人、カーラ・オルティスさんが描いた絵について、番組内で、絵をAIがまねたものと比較するパネルを街の人に見せ、好みを聞いた。AIの方は、描かれた女性の肌の色や表情などが少し違っている。
すると、20代の男女が「映えるし若者向けだ」としてAIを選び、男子小学生も「AIの方が好き」だと答えた。ほかには、人が描かなくてもよくなるのが問題だと別の20代女性らが話すシーンがあった。番組では、「AIの絵のクオリティの高さに驚く声」と紹介していた。
続いて、承諾を得ずにまねられたとオルティスさんが訴えていると番組が説明し、オルティスさんは、作風を似せるように自分の名前を指示に入れて他の絵もまねているとAIの悪用を批判していた。
これに対し、18日ごろになって、オルティスさんが放送内容に気づいたとツイッターで怒りをぶつけた。日本語翻訳などの協力を得たとして、23日には抗議声明を出した。
日テレ「放送後に、改めて企画趣旨などについて説明した」
番組公式ツイッターの投稿を引用する形で出された声明では、自分の承諾なく街頭インタビューで作品とAI模倣作を比較させ、自分の絵が嘲られるような形になったとし、「番組の行為に深く傷つき戸惑っている」と非難した。また、番組は、4時間のインタビューのごく一部しか使わなかったのは恥ずべきことだとし、情報提供のやり方に憤りを感じるとつづっていた。
ただ、日テレのニュースサイトが5月22日に「作風盗まれる? AIが出す指示の中に『自分の名前』が...アメリカで集団訴訟」のタイトルで配信したインタビュー記事については、内容は適切だったと評価している。
番組に出演したメディアアーティストの落合陽一さんは24日、「作品が本人の同意なく世論調査に使用されることについては、重大な問題であることは私も同感」だと英語でツイッターに投稿し、番組の取り上げ方に遺憾の意を示した。自らはAIを活用する時代に合わせて、ルールの方を変えていくべきだとの考えを番組で示しており、オルティスさんとツイッターで意見を交わしていた。
オルティスさんの抗議声明について、日本テレビの広報部は25日、J-CASTニュースの取材に対し、次のようにメールで回答した。
「ご指摘の特集は生成AIについての様々な意見、著作権などの問題点、活用法などを取材し、生成AIの現状を放送したものです。取材にご協力いただいたカーラ・オルティスさんには放送後に、改めて企画趣旨などについて説明させていただきました」
また、ニュースサイトの22日付記事については、オルティスさんから抗議を受けて載せたといった事実はないと説明した。
(J-CASTニュース編集部 野口博之)
【#生成AI が教育現場でチャンスに?】#AI が作り出した画像に#著作権 を侵害されたとして、
— news zero (@ntvnewszero) May 16, 2023
アメリカでは集団訴訟に発展。
一方で、G7教育相会合で
「学習などに好機をもたらす」とされた
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