東急は2023年5月17日、21年から実証実験として展開してきたホテルの周遊型サブスク(定額課金)サービス「TsugiTsugi」(ツギツギ)を正式に事業化して販売を始めたと発表した。
これに先立つ形で、東急、格安航空会社(LCC)のピーチ・アビエーション、日本経済新聞社が合同で社員100人に対して実証実験を実施。その結果、働く場所を選べる制度や、旅先での執務環境を整備することで「従業員のモチベーション向上に伴う生産性の向上やエンゲージメント向上、ストレス軽減などに大きく寄与することが示された」として、法人プランの売り込みも図りたい考えだ。
旭川から宮古島まで110か所から選べる
「TsugiTsugi」は、「旅するような暮らしを創造するプラットフォーム」という位置づけで、23年5月現在の会員は約2万人。宿泊できるのは、北は「JRイン旭川」(旭川市)から南は「宮古島東急ホテル&リゾーツ」(宮古島市)まで110か所にわたる。そのうち首都圏が33か所で、5月19日に東急歌舞伎町タワーに開業予定の「HOTEL GROOVE SHINJUKU」(ホテルグルーヴシンジュク)も含まれる。
利用可能な施設が多く、「どこに行くか迷う」という声も出たため、対話型人工知能(AI)のChatGPTの技術を活用し、利用者ごとに最適な宿泊先などを提案する「旅先こんしぇるじゅ」もリリースした。
3社の社員に対する実証実験は23年1~3月にかけて実施。「全国で旅するように働く」新たなワークスタイルのあり方を検証するのが目的で、100人が参加し、91件の有効回答を得た。
ピーチ社員は月に5泊の「平日旅」をするスタイル。有給休暇を使ってプライベートな旅行もできるようにした。今回発表された個人向けプランでは、月に5泊できる「えらべる5」(5万5800円)に相当する。東急、日経の社員は、これに日経のシェアオフィス・コワーキングスペースプラットフォーム「OFFICE PASS」(オフィスパス)の月5回利用をセットにしたプランを体験した。「えらべる5」だと6万1800円相当だ。
東急の場合「半額以上は従業員が自腹」で利用
サービスに対する満足度は「自腹」か「会社持ち」から大きく変わりそうだ。企画したホスピタリティ事業部事業戦略グループの川元一峰氏によると、一部は会社が補助した上で利用しており、東急の場合「半額以上は従業員が自腹」だという。
91人を職種別にみると、最も多かったのが「経営企画・事業企画」の20.9%。「マーケティング・商品企画・広告宣伝」(19.8%)、「人事・労務」(9.9%)、「財務・会計・経理」(8.8%)、「営業」(同)などが続いた。
宿泊の用途で多かったのが「旅行を兼ねたリモートワーク」といった「仕事・旅行併用型」の54.9%。「働く環境を変えるためのホテルステイ」といった「仕事特化型」は29.7%だった。
19.8%は「業務上の不都合」出たと回答
総じて満足度は高く、サービスに「満足した」「やや満足した」と回答した人は89.0%だった。自由回答では
「仕事と旅行は相反するものかと思っていたが、一緒に行うことでストレスも軽減した。家族も一緒に連れていったので、仕事をしながらも家族サービスできることも大きなメリット。 旅行との心理的な距離も近づきました」
という声が寄せられた。
移動しながら働くことについて「有効であった」「やや有効であった」と回答した人は85.7%。次のような声が出たという。
「せっかく旅をしているので、すき間時間の有効活用や業務効率化に向き合うことが出来、在宅勤務にくらべ業務効率が高まった。在宅では閉塞感もあるが、旅行をしながらでは全くそんなものは感じずに、リフレッシュしながら仕事が出来た」
ただ、19.8%が「業務上の不都合」が出たと回答。不都合の内容は「準備不足や忘れ物、紙媒体資料の持ち運びなど」で、今後の事前案内の充実や利用者の慣れで解消できるレベルだとみている。
(J-CASTニュース編集部 工藤博司)