経済産業省が2023年5月16日、強力な磁石を組み合わせた製品「マグネットセット」の規制を表明し、消費者の間で混乱が広がっている。
この製品には「ネオジム磁石」が使われており、ハンドメイド品やプラモデル制作など趣味の分野でも頻繁に利用される部品だ。規制を受けて磁石の出荷停止方針を一時告知した(後に撤回)メーカーもあり、入手困難になるとの懸念が漏れている。
しかし、経産省は取材に「磁石そのものであれば規制対象外です」と誤解が広がっているとした。
「かなりの衝撃かもしれない」
経産省によれば、子どもの誤飲事故が多発したためマグネットセットの規制を決めた。
磁石をくっつけて遊ぶ娯楽用品だが、子どもが誤飲して開腹手術で摘出せざるをえなくなった例が2017年~22年に11件あった。
そのため、乳幼児が飲み込みうる大きさで、誤飲しても自然排出されない水準の磁石は、23年6月19日から販売できなくなる。
発表文では、おもちゃとしての販売以外にも「14歳以上向けストレス解消」などと記載したマグネットセットもあり、「こうした子供向けではない製品についても、新たな規制の対象」としている。
自然排出されない水準の磁石とは、ネオジム磁石を念頭に置いている。同磁石はハンドメイド作品や模型など、大人が趣味を通じて購入する機会が少なくない。
磁石を取り扱うハイキューパーツ社は16日、「弊社が販売しているネオジム磁石製品も販売規制の対象となります」と発表し、8月10日での出荷停止を告知した。SNSでは「DIY/ハンドメイド界隈はかなりの衝撃かもしれない」「ミニチュアにほぼ必須なんですけど」と影響の大きさを危惧する声が続出し、買いだめを推奨する投稿もあった。
経産省の見解は
経産省製品安全課の担当者は17日、J-CASTニュースの取材に「規制対象はあくまで磁石製の娯楽用品ですので、基本的にはおもちゃとして使用されることを想定して作られている物となります。なので、ホームセンターなどでネオジム磁石が20、30個単位で売られていますが、これらは娯楽用品ではないので対象外です」と、ネットの懸念を払しょくした。
経産省では「マグネットセット」を「磁石と磁石をくっつけることで玩具や娯楽として使う製品」と定義しており、例として「マグネットボール」を挙げた。
ネオジム磁石を使った規制対象外の例では「磁石将棋」があり、「この製品は磁石同士をくっつけることを目的としていない」と話した。「DIY(日曜大工)で使ったり、おもちゃ、例えばガンプラなどで使うのは承知しているので、大人の安全管理の元で使う製品と想定されるものの場合、それらを妨げるものではないです」。
取材時点では、ハイキューパーツ社の件については把握していないとするも、「磁石そのものであれば規制対象外です」と繰り返した。
誤解の広まりを受け、ウェブサイトで追加説明を予定しているという。
ハイキューパーツ社は17日午後、経産省から「規制の対象が不明瞭な部分があり、ご迷惑をおかけしましたと連絡をいただきました」とツイッターで報告し、「弊社の製品は規制の対象ではない」と伝えられたため販売を継続するとした。