神奈川県自然環境保全センター(厚木市)が2023年5月12日、子ダヌキの「誤認保護」が増えているとして、「見つけても触らず、そのままにしてください!」とツイッターで注意喚起した。
発見者は善意で保護したつもりでも、実は子ダヌキを親から引き離し、「自然界で生きていく機会」を奪っている可能性があるという。同センターに詳しい話を聞いた。
「ちょっと待って!親ダヌキは戻ってきます」
同センターは12日、子ダヌキが誤認保護される事案が増えているとして複数ツイートにわたり注意喚起した。側溝で子猫のように鳴く声を耳にして保護してしまうケースを紹介し、「でも、ちょっと待って!親ダヌキは戻ってきます」と異議を唱える。
添付写真には、生まれたての子犬や子猫のようにも見える3匹の黒い子ダヌキが写っている。同センターが保護にあたったという。続く投稿では誤認保護をめぐり次のように訴えている。
「タヌキは側溝や縁の下など人間の生活圏の近くでも子育てをおこないます。親がエサ探しに出かけている間は子どもたちだけで残っています。また、雨が降ったり、危険がある時は子どもを一匹ずつ順番に運び、別の巣へ引っ越していることもあります」
「人間が保護してしまうと親と引き離すことになってしまい、自然界で生きていく機会を奪ってしまいます。また、人間のにおいが付くと親が警戒して子育てを放棄してしまう可能性もあります。見つけても触らず、そのままにしてください!」
神奈川県自然環境保全センター・自然保護課長は15日、前提となる活動として、県民から弱ったタヌキを発見したと相談が寄せられた場合は必要に応じて保護を受け入れているとJ-CASTニュースの取材に説明した。
「タヌキは年間を通じて疥癬症(かいせんしょう)や交通事故などで持ち込まれるケースがあり、例年1年間に20~40頭程度(子ダヌキ含む)を保護しています」
今年は11頭のタヌキを保護した。ただ、うち6頭は子ダヌキかつ県民による誤認保護とみられ、親が戻る可能性は低い状況だと判断して受け入れたものだという。子ダヌキに限らず、保護した野生動物は野生復帰に向けて飼養・治療・リハビリし、自立できる状況になったら自然に返す「放野」を行っている。
「人間に育てられたタヌキが野生で生きていく厳しさ」
子ダヌキの誤認保護に関しては、今後もホームページやツイッターなどを通じて、注意喚起や県民理解を進めたいと意気込む。下記のように対応を呼びかける。
「子ダヌキはまだ餌の取り方や危険からの身の守り方などを学んでいません。人間は、保護したタヌキに餌をやり、体を大きくすることはできても、タヌキが野生で生きていくために必要な術を教えることまではできません。
当センターでは、野生に返すことを前提に保護し飼養していますが、人間に育てられたタヌキが野生で生きていく厳しさは想像に難くありません。やはり、親から離さずに見守るのが最初の選択と考えます」
例年、子育て時期にあたる4~5月ごろに保護事案が増えるものの、「短期期間で複数の子ダヌキが持ち込まれることは珍しい」と今回はツイートに至った。県民の発見が偶然相次いだと捉えている。
課長によるとタヌキは県全域に生息しており、街中でも、大規模公園など緑のまとまった場所にいる可能性がある。しかし、一般に子ダヌキは実物と写真を比べても子犬や子猫と見分けがつかない場合が多いという。
判別に困った際は、電話相談やメールでの写真送付によってアドバイスが可能だとした。神奈川県においては横浜市立野毛山動物園、横浜市立金沢動物園、横浜市立よこはま動物園ズーラシア、川崎市立夢見ヶ崎動物公園もタヌキの保護に取り組んでおり、相談先に挙げられる。
「子タヌキを発見しても、まずはそっと見守ってください。そのうえで、何かご相談事があれば、当センターや横浜市・川崎市の動物園に電話やメールでご連絡ください」