船と陸を繋ぐロープに、ぶら下がるなどのいたずら行為を撮影した動画が拡散され、物議を醸している。万が一ロープが切れてしまうと、重大な事故につながる可能性がある。
取材に対し、撮影された船の運航会社は2023年5月16日、「極めて危険な行為」と警鐘を鳴らす。
乗組員も気づかぬ間に
動画は元々、ティックトックに投稿されたものとみられる。福岡のある港に停留中の船と岸を繋ぐ係留ロープに男性がまたがっていた。岸から船を目指している様子だが、疲れたのか力なく這うようにロープをひっぱりながら前進する。撮影者や周囲の人々の笑い声や、男性が振り向くよう「ハイチーズ」と呼び掛ける声も入っていた。
動画はツイッターなどで拡散され、「危ない」などと話題になった。ツイッターに動画を転載したユーザーは、この岸壁には車を撮影するために人が集まることがあると投稿していた。
取材に対し、動画に移っていた船の運航会社の管理部長は、動画について把握していると答える。14日ごろから、一般の人々や取引先から問い合わせが寄せられているという。
「我々の運航船舶であることに間違いないです。5月13日か14日に撮影されたものと見られます。公のものかは分かりませんが、この付近で何かしらのイベントが開かれていたようで、乗組員は外が騒がしいとは認識していたようです。ロープに人がぶら下がっていることは知りませんでした。離岸し通常の運航に戻ってから知らされました」
ロープに傷は見られず、運航にも支障がなかったことから、警察に相談などはしていない。万が一、被害が判明した場合には、対応を検討するとしている。
「軽はずみにやって亡くなってしまう可能性がある」
運航会社の管理部長は、ロープにまたがっていた人物が「どうやって陸に戻ったのか心配です」と話し、ロープの危険性を強く訴えた。
「今回は緩んでいる状態でしたが、張っている状態で、風が強かったり波が強かったりしたときには、人が亡くなってしまうほどの衝撃を引き起こすことがあります。 極めて危険な行為だと思いますし、軽はずみにやって亡くなってしまう可能性があり心配です。この危険性は、よく知ってほしいと思います」
張力のかかった状態のロープは、破断すると大きく跳ね返ってくる「スナップバック」現象を引き起こすことがあり、重大事故につながる可能性がある。
国土交通省の外局・運輸安全委員会でも2012年8月、運輸安全委員会ダイジェストで死亡事故の事例を紹介していた。