ニンテンドースイッチの注目作「ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム」の発売を受けてSNSに目立ったのが、ゲームを楽しむため有給休暇を取得した、との報告だ。
2023年5月12日の発売当日には、「ゲーム休暇」「ゼルダ休み」が一時トレンド入りした。
「有給休暇取得に『正当な理由』は必要ありません」
同作は、大人気ゲームシリーズ「ゼルダの伝説」の最新作。世界で約3000万本を売り上げた前作「ブレス オブ ザ ワイルド(ブレワイ)」から約6年ぶりの新作発売に、ファンは高い期待を寄せていたようだ。ツイッターには、
「たしかに今日ゼルダやるために休んだスタッフいるわ!有給をこういう趣味に没頭する時間として使うのはありだと思う、息抜きもかねて」
などの声が続々と。「ゲーム休暇」というワードがトレンド入りするなど、大きな話題になった。
一方で、ゲームを遊ぶために有休を申請することについて、「ゼルダ休み取れる会社ってどのぐらいあるんだろ?」との声も。
「ゲームのために」といった理由で、会社に有休を申請できるのか。J-CASTニュースは15日、弁護士法人プラム綜合法律事務所の梅澤康二弁護士に話を聞いた。
――そもそも有給取得に正当な理由は必要なのでしょうか。
有給休暇は労働者の権利として取得できるものであり、権利行使に正当理由までは要求されていません。労働者は、いつでも、いかなる理由でも有給休暇の権利を行使できるのが原則であり、取得に「正当な理由」は必要ありません。
「私用」での申請でOK?
――仮に「ゲーム休暇」を理由とした有給休暇の取得申請があったとして、これを認めなければ会社側は違法となるのでしょうか。
労働者による有休権の行使に対し、会社は時季変更権を行使することで有給休暇取得日を調整する余地があります。そのため、労働者による有休申請に対し、会社が正当な理由に基づいて時季変更権を行使する場合、労働者の希望日以外に休暇を指定することは可能です。
もっとも、時季変更権の行使が許容されるのは、有給休暇取得により業務の正常な運営に著しい支障が生じる場合という極めて高いハードルが設定されていますので、会社が時季変更権を行使できる場面はかなり限定的である(逆にいえば、労働者は基本的に希望通りに有給休暇取得を取得できる)と考えて差し支えありません。
したがって、上記ケースについても、会社は時季変更権を正当化し得る特段の事情がない限り、有給取得を希望通り認めない行為は違法となる可能性が高いと考えます。
時季変更権について、労働基準法第39条5項では、従業員の有休申請について会社側は「請求された時季に有給休暇を与えることが事業の正常な運営を妨げる場合においては、他の時季にこれを与えることができる」と説明されている。
――有給休暇の申請理由を「私用」とすることはできますか。
可能ですし、実際そのような事例は多いと思われます。
ウソの理由での有休申請がバレたらどうなる?
――労働者が有給取得の際に嘘の理由で申請し、それが発覚した場合、どうなるのでしょうか。
有給取得に特段の理由を要求されない以上、原則として特に問題はありません。もっとも、会社が時季変更権を正しく運用する目的の範囲で取得理由を尋ねた場合に、労働者が殊更虚偽となる説明をしたような場合、労働者側に一定の責任が生じる可能性は否定できません。
――会社側が、従業員に取得理由を聞くことは法律的に問題がありますか。
上記の通り、会社が時季変更権を正しく行使する目的の範囲で労働者に対して有給取得理由を尋ねることは許容されます。そのため、会社が時季変更権を行使する可能性を説明しつつ、その判断に必要な理由を踏まえて取得理由を尋ねること(例えば、同時に複数の有休申請があがってきており、誰を優先させるかを吟味する必要があるなどを説明して理由を尋ねる等)は、特に問題ないと考えます。
――会社に有給休暇の取得を断られた際の対処法はありますか。
会社側に有給取得を認めない理由を書面で説明するよう求め、後日、当該理由の正当性を吟味し、正当なものでない場合は損害賠償請求をする等は理論的にあり得ます。しかし、在籍中の従業員がそこまで敵対的な行動を取りうるか、また、取るべきかは慎重な検討が必要です。現実的には、有給取得を申請するに当たり、法律の建前を踏まえながら会社とよくよく協議するのが宜しいかと存じます。
みんな体調悪すぎて、明日会社に誰もいない気がしてきた pic.twitter.com/YxukSGruhr
— ポケットペア公式 - Craftopia/クラフトピア (@PocketpairJapan) May 11, 2023