「ジャニーズ事務所」の藤島ジュリー代表取締役社長が2023年5月14日、故・ジャニー喜多川前社長(2019年死去)から性被害を受けたとする元所属タレントの告発を受けた謝罪声明を、事務所公式サイトに掲載した。
声明は一問一答形式だが、あわせて、ジュリー氏が経緯を説明したうえで謝罪する約1分間の動画も公開された。一連の対応をめぐっては、社長本人が顔を出して謝罪したことにも驚きの声が出ている。
顔を出したことに狙いはあるのか。J-CASTニュースは、企業の危機管理に詳しいエイレックス(東京都港区)の江良俊郎社長に聞いた。
「重大さを事務所として重く受け止めていることを示したい」
江良氏は、今回の声明の発表方法について、ジャニーズ事務所側に、色々な角度から質問をされてしまう会見はしたくないが、何もしないのはまずいという判断がまず先にあったのではないかと指摘する。
その一方で、文書だけの発表に留まらなかった理由があると分析する。
「文書のみではなく動画を出したのは、今回の件について『事は重大である』とアピールしつつ、その重大さを事務所として重く受け止めていることを示したい狙いがあったと考えます」
あわせて、ジュリー氏だけでなくジャニー氏も含め、これまで、ジャニーズの経営者がメディアに姿を見せる機会が少なかったことから、「経営者の顔が見えないがゆえに感じていた『不気味さ』を払拭する」狙いもあったのではないか、とした。
「何が起きたのかを明らかにしなければ、再発防止策も立てることができない」
さらに江良氏は、「今回のような場合は、事実を究明し、その上で、どこに問題があったのか、何を反省しているのか、どう対策を講じるのか、自身の処分も含めた責任などの詳細を示す必要がありました」と問題点を指摘。さらに、記者会見ではなく、一問一答をまとめた声明を公開した理由については、次のように分析した。
「一言でいえば、会見を開いても回答できないことが多く、答えられないことへの批判が来ることが分かっていたので、それを避けたかった、の一点でしょうか。『知りませんでした』『被害を訴えられた方に向き合っていく』以外の回答ができず、そうこうしているうちに回答のつじつまが合わなくなり、しどろもどろになることを避けたのではないか。結果、よりダメージの少ない一方的な『動画+文書』を選んだと考えられます」
江良氏は、藤島氏が声明で「知らなかったでは決してすまされない話だと思っておりますが、知りませんでした」としていることについても、「ジャニー氏による性加害は2003年の東京高裁で認定されており、その後も暴露本も出版されている。知らなかった、実権がなかったとの説明では、説明責任も果たせていない。現トップとして、当時、どのような認識だったのか、問題を感じていなかったのかなどを説明すべき」と厳しく指摘した。
第三者による調査委員会を置かないことについても、「何が起きたのかを明らかにしなければ、再発防止策も立てることができない。批判の的となっている事務所の隠ぺい体質も改善する気が感じられません」。プライバシーなどに配慮した上でヒアリングを実施すべきだとして、このまま調査せずに終わりにしようとするなら、「さらなる批判の対象となり得ます」と断じていた。
(J-CASTニュース編集部 坂下朋永)