政府は2023年5月8日から新型コロナウイルスの感染症法上の位置付けを危険度が上から2番目に高い「2類相当」から季節性インフルエンザと同じ「5類相当」に移行させた。
もちろん、日本で5類相当にしても、世界保健機関(WHO)が緊急事態宣言を解除しても、新型コロナウイルスが今も地球上に存在しているし、その変異を続けている。しかし、変異とともに致死率が下がり、ワクチン接種と感染を経て免疫力が上がったことなどで状況は著しく改善されたというわけだ。
新型コロナ対策に100兆円の大盤振る舞い
ここで、日本の状況を振り返っておこう。5月3日現在で百万人あたりの累積死者数からみると、日本は601人。他のG7諸国の米3323、英3320、伊3214、仏2520、独2076、加1355人と比較すると圧倒的に低い。
日本の新型コロナ対策は100兆円と大盤振る舞いだった。その結果、多くの医療機関は多額の補助金で潤ったことが批判されている。今年1月、会計検査院が公表したが、1医療機関あたりの平均収支額はコロナ前の2019年度3億8600万円の赤字だったが、2021年度には7億500万円の黒字となっている。これは、コロナ病床確保などで多くの補助金が医療機関に配られたからだ。
さらに、コロナ関連予算30兆円のうち16兆円も使途不明であるのを問題視する声もある。
ただし、これには若干の誤解がある。まず、財政支出を迅速に行うので、不適切なものは事後的にチェックするというのがコロナ時の対応だった。
また、「安倍晋三回顧録」には、「財務省の発信があまりにも強くて、多くの人が勘違いしていますが、様々なコロナ対策のために国債を発行しても、孫や子に借金を回しているわけではありません。日本銀行が国債を全部買い取っているのです。日本銀行は国の子会社のような存在ですから、問題ないのです。信用が高いことが条件ですけどね」と書かれている。
マスコミは報道していないが、安倍さんの言葉を借りれば「政府・日銀の連合軍」であり、子や孫につけ回しをしなかったので、このための増税はない。安倍・菅義偉政権は財務省からの増税圧力をはねつけた。
新たな増税さえなければ、うまく行くはずだが
また、使途不明金もマスコミの煽りすぎだ。現時点で会計的に締めていないので項目として「使途不明」なのであって、最後には「使途」は明らかにされるものばかりだ。
日本のコロナ対策100兆円は、先進国の中でもトップクラスだ。これは有効需要を作り経済へも貢献した。経済落込みが最悪であった2020年第2四半期のGDPの対前年同期比の落込みは、日本▲9.9%、米▲8.4%、英▲22.6%、伊▲17.8%、仏▲18.6%、独▲10.4%、加▲12.2%と、日本の落込みは比較的少なかった。
あとは、コロナ後の景気爆発を待つばかりだ。新たな増税さえなければ、うまく行くはずだが、岸田文雄政権はどうするのか。
++ 高橋洋一プロフィール
高橋洋一(たかはし よういち) 元内閣官房参与、元内閣参事官、現「政策工房」会長
1955年生まれ。80年に大蔵省に入省、2006年からは内閣参事官も務めた。07年、いわゆる「埋蔵金」を指摘し注目された。08年に退官。10年から嘉悦大学教授。20年から内閣官房参与(経済・財政政策担当)。21年に辞職。著書に「さらば財務省!」(講談社)、「国民はこうして騙される」(徳間書店)、「マスコミと官僚の『無知』と『悪意』」(産経新聞出版)など。