三重県で2023年5月に行われた伝統行事「上げ馬神事」が、動物愛護の観点から議論になっている。
馬に乗って急斜面の土壁を乗り越えさせることで、豊作や吉凶を占おうとする神事だが、難易度が高く人馬に危険が伴う。今年も1頭の馬が骨折し、安楽死させた。
「長年守ってきた人たちとっては生活の一部」
三重県への取材や県観光連盟のウェブサイトなどによれば、上げ馬神事は600年以上前の南北朝時代から続く県の神事だ。例年10万人ほどが訪れ、観光客も少なくない。
人馬が坂道を疾走して約2メートルの土壁の乗り越えに挑み、豊作や吉凶を占う。多度大社(桑名市)と猪名部神社(員弁郡)で毎年行われ、前者は1978年に、後者は2002年に県無形民俗文化財に指定された。多度大社では騎手は15歳から20歳までの地元の若者から選ばれ、1か月で乗馬をマスターする。
直近ではコロナ禍で中止が続いていたが、多度大社では4年ぶりに再開し、5月4、5日の2日間行った。初日は12回挑戦し、成功はなし。2日目は6回中3回達成した。
しかし、SNSでは馬が壁を乗り越えられず転倒したり、興奮して暴れ回ったりする過去の動画や写真が拡散し、「馬の骨折は『死』意味します」「壁を低くするなど、文化を存続させる方向で変化させていくのも選択肢だと思います」「直接関わりのない人にとっては無くてもいいものに感じられても長年守ってきた人たちとっては生活の一部なのです」などと議論を巻き起こした。
桑名市の上げ馬神事を紹介するツイートには、9日までに約1500件の書き込みが寄せられている。
日本維新の会の串田誠一参院議員は9日、「多度大社の上げ馬神事に多くの方からご意見やご要望を頂いています」とツイートし、「昔から行われているというだけで動物虐待が許されることにはなりません」と非難した。所属する「動物福祉(アニマルウェルフェア)を考える議員連盟」で議題に取り上げる予定で、個人としても環境省に見解を求めるという。