暴露系インフルエンサーなぜ支持される?危うさは? 「ネットメディア・テレビも加担」「適切な距離感が大切」...3人の識者の考え

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   ネットユーザーから寄せられたタレコミや迷惑行為の動画などをSNS・動画サイトに投稿し、拡散を促す「暴露系インフルエンサー」。未成年者に対する暴露や、虚偽投稿などの問題を抱えながら、ネット上で存在感を維持し続けている。

   彼らはなぜ、支持されるのか。そして、彼らの活動が引き起こす倫理的・法的な問題点、暴露と向き合うメディアやネットユーザーに求められることは。

  • 「暴露系インフルエンサー」はなぜ支持されるのか(画像はイメージ)
    「暴露系インフルエンサー」はなぜ支持されるのか(画像はイメージ)
  • 「暴露系インフルエンサー」はなぜ支持されるのか(画像はイメージ)

「相談」から「暴露」へ 識者が見た人気インフルエンサーの「変化」

   「いわゆる『暴露』を中心に活動しているインフルエンサーは、2020年前後から目立ち始めた印象です」――。23年4月18日、J-CASTニュースの取材にこう話したのは、ITジャーナリストで成蹊大学客員教授の高橋暁子氏だ。高橋氏は、ユーザーからのタレコミを生配信で「暴露」する動画配信者・コレコレ氏を21年に取材している。

   SNSや動画サイトで、有名人の不祥事や迷惑行為などの暴露を行う「暴露系インフルエンサー」の特徴について、高橋氏は「多少なりとも正義感や使命感がベースにあるものや、エンタメ性・ゴシップ色が強いものなど、それぞれの活動スタイルに濃淡があり、ひとくくりには説明できない」とする。その上で、2年前にコレコレ氏に取材した際の印象をこう振り返る。

「穏やかで常識的な方でした。当時はユーザーから寄せられた相談に答える活動をされており、親や友人などに打ち明けられない悩みを持つ人や相談機関を頼れない人にとって、第三者視点で相談できる場として機能していた印象でした。自身も『自分だけでは分からないことも、視聴者の力で解決できる』というようなことをおっしゃっていて、自分のことをよく客観視されていたと感じました」

   ユーザーからの「お悩み相談」で支持を集めたコレコレ氏はその後、YouTuberやインフルエンサーなどのスキャンダル・不祥事を伝える「暴露」や、その当事者に電話などで「直撃」するスタイルへと舵を切った。高橋氏は「『ネット炎上』にかかわるなど、勝手に抱いていた当初の印象からはズレを感じるようになりました」と印象の変化を口にする。

   J-CASTニュースはコレコレ氏に取材を申し込んだが、スケジュールの都合で応じられないと所属事務所から返答があった。

「暴露」はなぜ支持されるのか

   ネット上ではコレコレ氏のほかに、ツイッターで活動する滝沢ガレソ氏などが多くのフォロワーを集める。前参院議員のガーシー容疑者も、当初はネット上での「暴露」を通じて認知度を集めた。彼らはなぜ支持されるのか。高橋氏は、次のような見解を示す。

「強い立場にいる人や悪いことをしている人をこらしめたい、成敗してほしいというユーザーの思いが、彼ら(インフルエンサー)を支えているのではないでしょうか。閉塞感を抱えていたり、『自分には特別なものがない』と苦しんでいる人たちが、彼らを支持することによって、支配層などに対するやり場のない怒りや悔しさを肩代わりしてもらう。そんな動機が根底にあるのだと思います。こうした傾向は、人々が外に出られずストレスを抱えていたコロナ禍に特に強まったとみています」

   2000年代には、人気芸能人が殺人事件の実行犯だとする誹謗中傷の書き込みを行ったネットユーザーが一斉に摘発された事件があった。「悪い奴をやっつけてほしい」というネットユーザーの感情は、当時から変わっていないのではないかと、高橋氏は話す。

   インフルエンサーによる「暴露」がネットユーザーから支持を集める一方で、「犯罪行為ではない動画や未成年者の暴露動画などを『多くの人が見たいから』という理由で晒してしまうことには倫理的な問題があるのではないでしょうか。それを拡散するユーザーが匿名だと攻撃性が高まるため、その正義感や処罰感情が行き過ぎてしまうという弊害もあります」と高橋氏は指摘する。

暴露系が変えたネット炎上の「発火点」

   インフルエンサーの投稿をきっかけに、暴露された当事者が執拗に叩かれる「ネット炎上」を招くこともある。著書『炎上する社会』(弘文堂、2021年)で知られ、ネット炎上や企業広報論などを研究してきた帝京大学文学部社会学科准教授の吉野ヒロ子氏は4月21日の取材に、個人的な恨みなど何らかの動機で「ネット炎上」を起こしたいユーザーにとって、暴露系インフルエンサーの登場は大きな変化だったのではないかと分析する。

「ネット炎上は、2ちゃんねるやツイッターに投稿されて反響があった話題をネットメディアが拾い、それをテレビなども報じることで拡大してきました。しかし、2ちゃんねるやTwitterに投稿して『炎上』を起こそうとしても、反応がないまま誰にも知られずに埋もれていったケースも多いのではないでしょうか」
「そうした中、発信力を持つインフルエンサーが現れ、彼らに『タレコミ』をするという選択肢が生まれました。彼ら(インフルエンサー)のゲートキーピング(編注:取り上げる情報の取捨選択を意味するマスメディア研究用語)をクリアしさえすれば、多くの人の目に触れてそのまま炎上に至る可能性は高くなります。そういう意味では、炎上の『発火点』がわかりやすくなったと言えると思います」
暴露系インフルエンサーの登場によるネット炎上の「発火点」の変化
暴露系インフルエンサーの登場によるネット炎上の「発火点」の変化

   吉野氏は、インフルエンサーの投稿を受けて記事を配信するネットメディア、それをもとに報道するテレビも「ネット炎上」に加担しているとし、「メディアに取り上げられた炎上当事者の中には、人生が大きく狂わされた人もいます。学生であれば退学せざるを得なくなったり、その後も就職や結婚で不利になったりすることもあります。特にテレビの影響力は大きく、報道の仕方には配慮が必要ではないでしょうか」と説く。

「暴露系」とどう向き合うべき?識者の見解は...

   ネット上の誹謗中傷問題などに詳しいインテグラル法律事務所の小沢一仁弁護士は4月20日の取材に、暴露系インフルエンサーの活動の法的リスクには大まかに「プライバシー権侵害」「名誉権侵害(名誉棄損)」の2つがあり、名誉権侵害においてはほぼすべての事件で、投稿により摘示された事実の「真偽性」が焦点になるとした。

   小沢弁護士は、「インフルエンサーに虚偽の情報を載せられた」「インフルエンサーの配信中、タレコミを行った人物に虚偽情報を広められた」など、虚偽情報を広められた側の相談に応じてきた。そして、「暴露系」の虚偽投稿を拡散するユーザーも法的リスクの他人事ではないとし、次のように警鐘を鳴らす。

「例えば『人違い』かつ『中傷』がともなう投稿などを拡散し、当事者から名誉棄損で訴えられた場合は、慰謝料だけで30万円程度請求される可能性があります。また、情報開示請求や弁護士に対する費用などもかさむ場合もあり、身内に知られたり、解決までの時間的拘束が生じるリスクもあります。場合によっては刑事罰を受けることもあり得ます。暴露系インフルエンサーとして影響力を持っている方は、過去に大きな話題になった暴露を行い、その結果、暴露された人が法的、社会的制裁を受けたという経験を持っている人が多いのではないかと思います。そのため、当該インフルエンサーの信用性は高いと思われる傾向にあると思います」
「しかし、『この人が言っているなら正しいだろう』と安易には飛びつかず、一次ソースをしっかり確認することが重要です。定期的に、『情報を流した人が悪い。自分は信じて拡散しただけだから悪くない』という主張に触れますが、そのような言い分は裁判では通りません」

   倫理的リスク、法的リスク、そして炎上リスクをはらんだ暴露系インフルエンサーの活動。ネットユーザーは、彼らとどう向き合っていくべきだろうか。高橋氏、吉野氏にも見解を聞いた。

「暴露系インフルエンサーの中には『みんなが見たがっているから』という理由で迷惑行為などの動画を投稿されている方もいます。ユーザーはそうした狙いに乗りすぎず、『適切な距離感』で情報と向き合っていくことが大切なのではないでしょうか」(高橋氏)
「人間は自分なりのルールの感覚が正しいかどうか常に知ろうとするものですし、また他人の『やらかし』を見るのが好きな生き物なのだと思います。ある意味、炎上に惹きつけられるのは仕方がないところがあるかもしれません。ですが、ネット炎上に加担しないためには、炎上に関する情報を見たとしても、自分は書き込まない、拡散しないというような『自重』が必要かと思います」(吉野氏)

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