暴露系が変えたネット炎上の「発火点」
インフルエンサーの投稿をきっかけに、暴露された当事者が執拗に叩かれる「ネット炎上」を招くこともある。著書『炎上する社会』(弘文堂、2021年)で知られ、ネット炎上や企業広報論などを研究してきた帝京大学文学部社会学科准教授の吉野ヒロ子氏は4月21日の取材に、個人的な恨みなど何らかの動機で「ネット炎上」を起こしたいユーザーにとって、暴露系インフルエンサーの登場は大きな変化だったのではないかと分析する。
「ネット炎上は、2ちゃんねるやツイッターに投稿されて反響があった話題をネットメディアが拾い、それをテレビなども報じることで拡大してきました。しかし、2ちゃんねるやTwitterに投稿して『炎上』を起こそうとしても、反応がないまま誰にも知られずに埋もれていったケースも多いのではないでしょうか」
「そうした中、発信力を持つインフルエンサーが現れ、彼らに『タレコミ』をするという選択肢が生まれました。彼ら(インフルエンサー)のゲートキーピング(編注:取り上げる情報の取捨選択を意味するマスメディア研究用語)をクリアしさえすれば、多くの人の目に触れてそのまま炎上に至る可能性は高くなります。そういう意味では、炎上の『発火点』がわかりやすくなったと言えると思います」
吉野氏は、インフルエンサーの投稿を受けて記事を配信するネットメディア、それをもとに報道するテレビも「ネット炎上」に加担しているとし、「メディアに取り上げられた炎上当事者の中には、人生が大きく狂わされた人もいます。学生であれば退学せざるを得なくなったり、その後も就職や結婚で不利になったりすることもあります。特にテレビの影響力は大きく、報道の仕方には配慮が必要ではないでしょうか」と説く。