作業療法士としての知見を活かし「困っている方を助けることができる」
作業療法士は、主に医療機関や介護分野でリハビリを提供する職種だ。川口さんは主に脳卒中関連のリハビリテーションを行なってきたという。竹林さんも過去に、作業療法士として、兵庫医科大学病院に勤務していた。
竹林さんは現在、大阪公立大学で脳卒中後のリハビリテーション全般の研究をしており、川口さんとともに片手が使いにくい脳卒中患者のための道具の開発を手掛ける。担当は道具作成のアドバイザーと広報戦略だ。川口さんはマーケティング、制作・製造を担う。
川口さんは仕事の中で、握力の弱った高齢者や片麻痺の人が片手でペットボトルが開けられない場面を見聞きしていた。モノづくりが好きな川口さんは、「その方々の困っていることを解決しよう」と考え、自助具の開発を始めた。自宅用に購入していた3Dプリンターで最初に作ったのは「片手で開けられるペットボトルオープナー」だった。
「ペットボトルオープナーを販売していく中で世の中には片手生活を送っている方が多くいて、様々な日常生活動作を行えず困っていることがわかりました。そこで、自分の知識・技術で困っている方を助けることができることがわかり、片手でできるプロダクトの活動を行おうと決めました」
片麻痺の人だけでなく、握力の弱い人にも受け入れられる商品だったため、大きな反響があった。川口さんは「デザインのポップさも評価されたように感じています」と振り返る。オープナーは花のような形状で、好きな色の組み合わせのものを購入できる。
「事故や脳卒中になり、後遺症が残ると片手での生活を余儀なくされます。片手生活で困ることが主に日常生活動作です。よって主に日常生活動作に即した自助具を企画・作製しています。実際に関わっている障がいを持った方達の日常生活を送る上で困っていること、私自身が日常生活を送る上で不便だと感じること、から道具の企画の基本を考えます。
また、複雑かつ多機能な道具は操作や部品点数が多くなり破損する可能性かが高くなります。したがって、できるだけ操作が簡単にできるよう、シンプルな構造・デザインを心がけるようにしています」