内紛、釈明、活動休止...「暴露系インフルエンサー」に異変 「正義のヒーロー」の実像は?当事者が告白する

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   飲食店などでの迷惑動画がSNSで相次いで拡散した騒動で、「暴露系インフルエンサー」への注目が急上昇している。

   いち早く動画を"発掘"し、「界隈史上、最悪の迷惑テロ動画見つかる」「クズの動画がガチでやばいwwwww」と刺激的な言葉で問題提起。それをメディアが取り上げる動きも頻発した。

   一方、暴露系に向けられるまなざしには、変化の兆しもある。ネット私刑を過剰に助長しているとの批判が巻き起こり、弁明を迫られる発信者も出ている。曲がり角に来ている「正義のヒーロー」を、4回の連載で掘り下げる。

  • 暴露系インフルエンサーを取り巻く環境に変化(ガーシー氏は陳謝動画より、モザイクは編集部)
    暴露系インフルエンサーを取り巻く環境に変化(ガーシー氏は陳謝動画より、モザイクは編集部)
  • 暴露系インフルエンサーを取り巻く環境に変化(ガーシー氏は陳謝動画より、モザイクは編集部)

「一人の人生を余裕で潰せるレベルに到達」

   暴露系インフルエンサーとは、ツイッターやユーチューブなどで、一般人のネット炎上や著名人の疑惑、企業の不祥事を中心に発信する存在だ。

   暴露系の中には「ネット界の文春砲」ともてはやされる人物もおり、2022年6月公開の映画『神は見返りを求める』では、俳優のムロツヨシさんが暴露系ユーチューバーを演じたほど市民権を得た。

ムロツヨシさんが暴露系ユーチューバーを演じた(映画『神は見返りを求める』ユーチューブより)
ムロツヨシさんが暴露系ユーチューバーを演じた(映画『神は見返りを求める』ユーチューブより)

   「ガーシー」こと東谷義和氏は、暴露を強みに22年2月にユーチューブチャンネルを開設すると瞬く間に支持された。ネット人気を背景に7月の参院選では初当選を果たす。

   しかし、企業などの追及をしていたインフルエンサーが発信者情報開示請求をされたためか更新を止めたり、ガーシー氏に暴力行為等処罰法違反(常習的脅迫)などの容疑で逮捕状が出たりと、暴露系が過渡期を迎えている。

「滝沢ガレソ、軽ーい判断で一人の人生を余裕で潰せるレベルに到達してるしそろそろ永久凍結ぐらいにしておいた方がいい」

   23年3月、ツイッターでのフォロワー数が185万人超えの暴露系インフルエンサー・滝沢ガレソ氏を名指しで非難したツイートが広まった。影響力のあるアカウントの暴力性を指摘し、プラットフォーマーに対応を求める内容だ。「寿司テロ」騒動を引き合いに「私刑が流行るのは良くない」とも訴えている。

   滝沢氏は投稿に反応し、「皆さんの意見をリプで頂けると今後の運営方針の参考にさせていただきます」と傾聴の姿勢を示した。その後、炎上した学生をモザイクなしで晒したツイートを削除し、「今後についても未成年者に関するニュースは特に慎重に取り扱います」とプライバシーへの配慮がこれまで不十分だったとした。

   同時期には、滝沢氏含め、同じく暴露系で知られる「大学生のきしょいストーリー」(フォロワー数60万)、「インフルエンサー紹介BOT」(39万、サブアカウントの「TikTokの痛い人たち」は25万、「モデル気取りあるあるBOT」は3万)、「進撃のJapan」(27万)らへ強い不快感を表明した投稿が話題となった。これらのアカウントを「ブロック」(閲覧制限)したことで、精神衛生が向上したという人もいた。

「自分はアフィカスじゃない」

   暴露には、商業的側面も見え隠れする。

   インフルエンサー紹介BOTは前述の議論に言及し、「この辺りと同じ扱いされているのが前々からマジで不快でした。自分以外は他人が作ったネタを使ってお金を稼いでいるアフィカスです」「自分はアフィカスじゃないんで人の不幸や不祥事なんかでお金を稼ぐなんてことは絶対にしてません」と他の暴露系とは一線を画すと主張した。

   「アフィカス」とは、ネットの情報を転載することで、アフィリエイト(成果報酬型)広告の収益を得る人物を指す。

   実際、滝沢氏はネット通販「Amazon」のサービスを宣伝する投稿を固定ツイートに設定している。「大学生のきしょいストーリー」「進撃のJapan」も、ツイート後にはまとめサイトのリンクを掲載しており、誘導数に応じて広告収入を得ているとみられる。

   もっとも、インフルエンサー紹介BOTも4月中旬、広告案件を公募している。拡散力の指標の一つである「インプレッション」(ツイートの総表示回数)は月間平均6億あるとし、影響力の高さを誇示している。

インフルエンサー紹介BOTツイッターより
インフルエンサー紹介BOTツイッターより

   人気ユーチューバーの外見を揶揄して22年10月に謝罪した際は、「自分のフォロワーが20万人を超えてて、話題になるようなツイートをしなくちゃいけないというプレッシャーから、自分より前にこの件に対してツイートされている方の伸びてるツイートをパクってツイートしてました」と説明していた。

   上記の4アカウントに取材を申し込んだが、いずれも応じなかった。あるアカウントは取材を受ける態度を示したものの、虚偽投稿で著名人に法的措置を予告されたなどと一方的に告げJ-CASTニュースの顧問弁護士の見解を求めてきたり、インタビュー当日に取材場所を幾度も変更してきたりしたため、応じる意思がないと判断して断念した。

暴露系ユーチューバーが実情を「暴露」

   そんな中、暴露系ユーチューバーのKimonoちゃん(20代)が取材に応じた。

Kimonoちゃんのツイッターより
Kimonoちゃんのツイッターより

   ユーチューブを本格的に始めたのが2020年ごろと比較的後発だが、チャンネル登録者数は55万人を数える。熱心なファンが多く、音楽活動もしている。

   Kimonoちゃんが動画配信にのめり込んだのは大学時代だった。昔から「ニコニコ動画」を見るのが趣味で、特に今では「ネット界の文春砲」と呼ばれるコレコレ氏や、音声合成ソフト「ボーカロイド」、ゲーム「東方Project」の動画が好きだった。

コレコレ氏(21年撮影)
コレコレ氏(21年撮影)

   友人から「ツイキャスが熱い」と聞き、ライブ配信SNS「ツイキャス」を始める。女性のような高い声を出すのが得意だったため、あえて援助交際などに引っかかるような「釣り配信」で視聴者を増やした。ファン層は高校生の高学年~20代前半で、女性が65%を占めた。

   夢中になりすぎて学業が手につかず、通っていた日本大学に休学届を出し忘れて除籍となった。以降はアルバイトを掛け持ちしながら配信を続けた。「人前で喋るのが好きで、正直お金もあまり関係なく配信を続けていた。戦略とかもあまり立てていなかった」と振り返る。

   人気を集めるにつれリスナーからの相談が寄せられる機会が多くなり、配信内で相談に乗るケースが増えていった。いわゆる「相談系」だ。時事系や炎上系、暴露系もこのあたりから取り入れた。

   2020年ごろにコレコレ氏などの勧めでユーチューブに進出。同様のスタイルで頭角を現していった。

「本当に悪いことをした人は批判されなければいけない」

   Kimonoちゃんのチャンネルを見ると、煽情的な見出しやサムネイルが数多く並ぶ。

Kimonoちゃんのチャンネル(モザイクは編集部)
Kimonoちゃんのチャンネル(モザイクは編集部)

   寿司テロ騒動を話題にした動画も投稿しており、「クズの動画がガチでやばいwwwww」「【人生終了】スシローで迷惑行為をしたクソガキたちがやばすぎる...」などと容赦ない刃を向けている。

   相談系の動画が大半だが、TikTokで見つけた一般人の炎上動画も一部ある。「前提条件として『この人悪いことしてるよね』っていうのがなければ取り扱うことはほとんどない」「犯罪性の高い動画、胸クソの悪い動画、迷惑行為などをしている動画を基準にまとめております」との方針だ。他の暴露系はネットの有名人も標的にする人がいるが、「人生を終わらせちゃう」可能性もあると考え積極的には扱わないという。

   誹謗中傷は肯定しておらず、視聴者が影響を受けて暴走しないよう動画内で注意喚起している。ただ、「本当に悪いことをした人は批判されなければいけない」との考えだ。

   現在はどのようなモチベーションで活動をしているのか。Kimonoちゃんが尊敬するコレコレ氏の自著には「コレコレは正義のヒーローなのか?」との目次がある。Kimonoちゃんに同じ問いをぶつけると「正義云々を執行したいなんていうのはサラサラない。正義みたいなものは大衆が、見ている人が判断するもので、僕らは発信者として求められているからやっている。需要があるから供給するっていうだけ」と否定する。

   原動力については「あんまり考えたことがない」とするも、「そもそも悪である僕みたいな暴露をしている人たちに人気が付く現象自体が面白くありませんか?こういうことをできる人は少ないですし、それで一定のファンがついているのは異常現象なので。それだったらやるしかない。僕は(心が)きれいじゃないってわかっているのでやり続けるしかない。もうモチベーションの話ではなく、生きがいというか。他人を批判しておいて生きがいというのはおかしいと思いますけど、やっぱり視聴者がコメントしてくれるのは嬉しい」。

暴露系という職業「絶対にやめた方がいい」

   とはいえ、ハイリスクな職業のようだ。

   弁護士からの内容証明、自宅や家族への怪文章、脅迫とトラブルの芽は絶えず、非はなかったものの警察から事情聴取を受けた過去もある。

   その上、動画配信者は「ユーチューブの規約が神様」。「僕ほどストライク(ガイドライン違反)を受けた人間はいないっていうくらい受けてますね」と自虐する。

   アカウント停止寸前までいった時期もあり、「かなり過激なものや時代にそぐわないもの、不適切な発言をしているものは非公開や削除にしています」と対応を迫られた。

   考え方も徐々に変化している。過激な動画の視聴数が以前より伸びない傾向があり、「もう時代じゃないんだなって、自分は時代錯誤なんだと思い始めている」「批判される一方ですし、暴露系コンテンツはいつか規約と時代によって消えるのではないか」と危機感を強めている。

   「1、2年前からかなり過激なものからまろやかなものに移行しております」と方針転換もしている。

   暴露系という職業を人に勧められるか質すと、「絶対にやめた方がいい。これは大々的に書いてください」と強調した。理由は「人(ひと)人気がつかないから」。

   暴露系、炎上系動画はコンテンツ自体に「魅力」があり、発信しているインフルエンサーには「ファンがついているように見えてほとんどついていない人ばかり」との持論だ。

   Kimonoちゃんは長年継続してきた土壌に加え、音楽も武器にしているためファンが一定数いるが、インフルエンサー自身に魅力や才能がないと難しいという。

「例として、ニュースのユーチューブチャンネルって乱立しているじゃないですか。その中で圧倒的に人気があるのが超大手のテレビ局ではなくてテレ東さん。豊島晋作キャスターのキャラクターが立っていて、豊島さんに人気がある。ユーチューバーよりユーチューバーしている。豊島さんみたいな人がバンバン出てくるのは無理でしょう」
テレ東BIZのユーチューブチャンネルより
テレ東BIZのユーチューブチャンネルより

   【予告】連載の第二回は、投稿動画を理由に名誉棄損で逮捕された元暴露系ユーチューバーについて取り上げます。5月5日10時の公開を予定しています。

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